風雨淒淒

 風が凄かった。
 午後11時過ぎに布団にもぐり込んだんだけど、家じゅうの雨戸が閉まっているので、少し蒸す。久しぶりにエアコンを入れて、本を読みながらうとうととしていた。ところがそのころから風が上がってきた。ワシャ寝床のすぐ右が窓で風が「ドンドン」と雨戸を叩く。雨戸の向こうにベランダがある。そこも「ズンズン」と大男の歩くような振動が響いてくる。雨も「パラパラ」と家を打ったかと思うと「ザアアァァァ」と滝のような一瞬もある。風音も「ゴオオォォォー」だったり「ピュウウゥゥゥー」だったり。時おり、家全体を「ドオオオオン」と揺すったりする。
 寝られまへんで。
 午前1時に2階の寝室から1階の居間にゆく。テレビを点けると、おいおい、18号まだ台風は北陸あたりで暴れているじゃないか。芋でも飲みながら台風の去るのを待ちますか。

 それはそれとして、夕べのフジテレビ系「Mr.サンデー」に、豊田真由子衆議院議員が出演し、お詫びとことの真相を説明していた。
《豊田議員、多くの批判も「もう一回、国と地元のために」》
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170917-00000232-sph-soci&pos=3
 まぁ謝罪はひとまず措くとして、真相の説明についてである。宮根アナウンサーの問いかけに、ワシャが見ている間だけでも4回は泣いていた。これはまずい。政治家は中学生の小娘ではないのだ。どんなことがあろうともベソベソ泣いたりしてはいけない。そういった意味では委員会で泣いていた稲田氏も、辞任会見で泣いていた蓮舫氏も甘い。しかし、豊田議員の場合、それがビー泣き、泣きっぱなし、なのである。これは政治家としての適性を大きく欠いていると言わざるを得ない。
 パニックに陥ったから泣く、喚く、叩く、これではダメなのだ。政治家は冷徹なものである。どんな状況に落とされたって、眉ひとつ動かしてはいけない。冷静に客観的に自分を見、状況を把握し、次の一手を考える。碁打ち、将棋指しに似ているのかもしれない。
 大局を見ることのできない豊田氏は政治家には向いていないことは明らかである。学歴は高いのであるからして、おそらく別の道を摸索したほうが、彼女にとってすてきな人生が全うできると思う。今回の一件や、彼女の言う不幸だった子供の頃のことを糧にして、教師なんかが向いているのではないか……。あるいはまだ若いのだ。地方の市議会議員あたりから政治とはなんぞや、政治家とはいかにあるべきか、を学習しなおせば、きっとやり直しはきく。
 人に認められたくて、人に褒められたくて仕方のない子供のままでは政治はできない。豊田氏の場合、認知されたい自分、好かれたい自分しか見えてこなかった。この人は間違いなく優等生(学業だけではなく)であったし、今でもそうあろうと念じ続けているのが垣間見える。
 田中角栄が言っていたのだが、「政治家は悪党でなけりゃ務まらない」ということなのだ。あらゆる政治行動の原動力は権力である。権力は暴力と言い換えてもいい。だから正直者、真人間ではなかなか権力(暴力)という荒馬の手綱は引けない。
「Mr.サンデー」のコメンテーターに木村太郎氏が座っていた。宮根アナから感想を問われ「政治家は人を育てなければいけない。それができていないね、この人は」と言うようなことを答えていた。
 権力を支えるものが、人であり組織である。議員直近のブレーンである秘書すら御することができなかった。人の「ひ」の字も組織の「そ」の字も知らなかったんだね。ライフワークとして政治家をどうしても目指したいなら、ここはいったん地方議員に転身して一からやり直したほうがいい。そして病院にも行ったほうがいいとも思った。
 そんなことを考えていたら台風もいつの間にか過ぎ去っていた。

 夜が明けて、台風一過の青空がひろがっている。我家の被害は簾が1枚風に飛ばされて消えていた。家の裏側の簾だったので、よほど大丈夫だろうと思っていたが、やられたわい。