直虎

 先週、落語の会があって、瀧川鯉昇の噺を聴いた。師匠は遠州の人、その関わりでNHK大河の『直虎』の話題になった。
「浜松の山間の集落で落語を定期的にやっているんですがね、そのあたりの人は芸能人といったらあたししか知らない。ところが『直虎』のロケで柴崎コウがきたから大変でした。えーなに!?芸能人ってあんなに綺麗なの!いままでのあれはなに!?」
 大爆笑だった。
 先週、歴史講座があって、歴史研究家の舟久保藍氏の講義を聴いた。織田と今川の対立と、その間に挟まった小領主の松平家、水野家などの動向の説明の中で、同じように大勢力の間で揺れ動いた井伊家の例も出て、NHK大河の『直虎』に話が及ぶ。

 立て続けに『直虎』が出てきたので、1月8日以来見ていなかったNHK大河の再放送を録画して夕べ遅くに再生した。
 およよよ!海老蔵織田信長阿部サダヲ徳川家康菜々緒の築山御前などがからんで、場面も岡崎、歴史も結構おもしろい時期に差し掛かっているじゃないか。だから早送りをして見たけれど、やっぱり柴崎コウの直虎がからむところ、史実の薄いところが弱い。おもしろくない。直虎と乳母の話などどうでもいいのだ。時は戦国ですぞ。戦国大名や小領主たちの生き残りを賭けた権謀術数、丁々発止のやりとりが見せどころであって、「歳をとった乳母が里に帰りましたとさ」なんてエピソードはどうでもいい。さらにどうでもいい屋根が重ねられるのだが、それほどシナリオが構築できないのならそもそも「女城主」などという選択をしないことだ。

 それにしても海老蔵丈は頑張っている。やややつれた観もあるが、それでも独特の低温で家康を脅す声には迫力があった。麻央さんが一番大変な時に、丈も辛かったと思うが、さすがにプロである。
 そうそう同じ歌舞伎界から尾上松也今川氏真役で出ているが、惜しいかな、なんで義元役の春風亭昇太のように、白塗り置き眉にしなかったのだろう。歌舞伎役者なので白塗りはお得意だろうし、そこまでリアリティーを追及してこそのプロ、歌舞伎次世代のホープだと思うのだが……。