仕事の合間をぬってコンサートにゆく。「ブルッセル・フィルハーモニー管弦楽団」である。ステファヌ・ドゥネーブの指揮。曲目は、コネソン:フラメンシュリフト(炎の言葉)、ベートヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」、ドビュッシー:交響詩「海」、ラベル:ボレロである。
ギョーム・コネソンはワシャの浅薄な経験ではまったく知らない。1970年生まれのフランス人作曲家だということだ。曲はよかった。けれど印象には残っていない。仕事の疲れもあって、なかばうつつの中で聴いていた。
「皇帝」は第二楽章がよかった。構想が大きく厳粛な気持ちにさせられる。ちょうどナポレオンがオーストリアに侵攻した時期に楽想していたと言われている曲で、当然のことながらナポレオンを意識していたことは間違いなかろう。
ドビュッシーの「海」は海そのもので、海以外の何ものでもない。第一楽章は「海の夜明けから真昼まで」。聴いていればまさにそのとおりで、徐々に明るくなっていく海面にイルカの群れが走ったり、その横を悠々と泳ぐクジラがいたりして、とても映像化しやすい曲であった。第二楽章は寄せて返す波や、海中のクラゲ、ウミヘビなどがイメージできる変幻に富んだ曲想だった。第三楽章は雷鳴、疾風、渦巻く波、白く高く頭を持ち上げる大波、嵐が過ぎて調和を取り戻した海が静けさをたたえている。
ボレロは「スイス・ロマンド管弦楽団」のCDを持っている。N響のもあってよく聴きこんでいる。でも、やっぱりライブがいい。
静かに忍び込んでくるボレロのリズム。かすかな幽かなドラムのささやきから始まる。弦楽器のピチカート(爪弾き)も加わって徐々に曲に厚みが増していく。主旋律をフルート、クラリネットが奏し、打楽器群も加わって、やがて大波のような盛り上がりをみせる。
それにしても「ブルッセル・フィルハーモニー管弦楽団」はビジュアルがよかった。80人くらいの編成である。その中に数人の日本人もいると冒頭のあいさつで言っていた。ざっと見る限り、そのとおりで日本人もいれば、あきらかにラテン系の女性も2〜3人、アラブ系の男性も混じっている。だが、大半は身長のある、鼻梁が長く高いゲルマン系というのかアングロサクソン系というのか、美男美女が多いのである。第2ヴァイオリンにはオードリー・ヘップバーンみたいな女性がいたし、コントラバスの女性もグレース・ケリーのような雰囲気を持っている。
ガキの頃に洋画を見過ぎて、白人コンプレックスを持っているのかもしれないが、とても格好いい楽団だった。