ワシャのクラシック歴は浅い。コンサートホールにゆくようになったのもショパンの生誕200年前後のことだから、初心者の初心者といったところである。だから友だちに誘ってもらって演奏会に行ったり、百田尚樹さんの『至高の音楽』や『この名曲が凄すぎる』を読んで勉強をしている。
昨日、NHK交響楽団の定期演奏会があった。曲目はオットリーノ・レスピーギの〈グレゴリオ風の協奏曲〉〈教会のステンドグラス〉〈交響詩「ローマの祭」〉である。
詳しい方はご存じなのだろうが、ワシャはレスピーギを知らなかった。『クラシック音楽鑑賞事典』(講談社学術文庫)を調べたのだけれど、3ページが割かれているだけである。ちなみにベートーヴェンは61ページ、モーツァルト59ページのボリュームとなっている。クラシックの巨匠と比べるとその足跡は小さいということなのだろう。
でもね、『クラシック音楽鑑賞事典』にこんなことが書いてあった。
《レスピーギは美しい旋律と幻想的な香気で風景を描写するに巧みで、おそらくは彼ほどに風景を描きうる音楽家はあるまいと思われる。》
ワシャは音楽素人なので、音楽を映像として楽しんでいる。たとえば映画に使われているクラシックなら、そのシーンを脳裏に描く。「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲であれば、『永遠の0』のラストシーン、太平洋上を飛ぶ特攻機の映像だったりする。
その点でレスピーギは記載のとおり風景をイメージしやすい。あらかじめ古代ローマの「コロシアム」の場面ということが解っていれば、大円形劇場で繰り広げられた残酷な絵巻が音から見えてくる。
『教会のステンドグラス』の第2曲〈大天使聖ミカエル〉が迫力だった。「ヨハネの黙示録」の天使と悪魔の激烈な戦いが描写されている。曲の最後にサタンが投げ落とされるのだが、「デビルマン」のクライマックスが脳裏に浮かんできたほどなのじゃ。それに感動していたら、とんでもないことになってしまった。
〈交響詩「ローマの祭」〉である。第1曲の「コロシアム」(チルチェンセス)も酔うように聴いていた。第2曲の〈五十年祭〉、第3曲の〈十月祭〉、第4曲の〈主顕祭〉と切れ目なく続いていくのだが、この盛り上がりがただものではなかった。通常の交響曲の楽器ばかりではなく、シロフォン、タムタム、タンバリン、グロッケンシュピール、鈴、ラチェット、タヴォレッタなどが駆使されて、交響曲を構成していく。ピアノもオルガンも登場するのだが、単なる打楽器としてその役割を演じている。
タヴォレッタって知ってますか?ワシャは知らなかった。禅堂に掛かっている打板(時刻を知らせる板)のようなものが舞台下手のあたりにあって、まったく同様な音を出していた。鈴の使い方も巧みで効果的だった。
そんなこんなが相まって、クライマックスの盛り上がりとともに鳥肌が立ってしまった。こんな感動を覚えたのは久しぶりだった。
今年は、レスピーギに注目したい。