掘出物がわんさか

 昨日の日記の最後にこう記した。
《この遅々とした掃除がストレス解消になっているのかも知れないから》

 日曜の昼過ぎに始めた書庫の掃除は、月曜になってもまったく目途が立つ状況に至っていない。漢文、儒教系の本を整理していると「これは支那国史系だな」と思われる本を見つけてしまった。世界史系は玄関横の書庫にある。そこへ踏み込んだのが間違いだった。第2書庫ということにしておこう。そこには芸能、スポーツなどの分野も置いてあって、わりと混在している……う〜ん、はっきり言うと混沌としている。ひとつの棚に前後置きを始めると整理がつかなくなる。そんな状態なのである。
 支那中国、朝鮮半島関連の本の下にヨーロッパ史があって、そこまではいいのだけれど、その下がなぜか芸能人関係の本になっている。

三木のり平『のり平のパーッといきましょう』(小学館
森繁久弥『ふと目の前に』(東京新聞出版局)
岡田嘉子『悔いなき命を』(広済堂
小林桂樹『役者六十年』(中日新聞社
小林信彦『天才伝説 横山やすし』(文藝春秋

などなどと、芸能人関連の本が並ぶ。こんな渋い方ばかりではなく、今話題の愛之助丈の奥様の本とか、珍獣ハンターイモトの本もある。麻薬で取っ捕まった押尾学の本もあって帯がおもしろい。「偽物(フェイク)か、本物(リアル)か…あなたに決めてほしい」って、偽物でしたね(笑)。
 おおお、『ジャニーズおっかけマップ2000』(鹿砦社)もありましたぞ。前半分はアイドル名鑑となっていて、16歳の松潤が載っていたりするんですぞ。愛知県安城市の桜井小に来た桜井翔くんも情報欄に「来春にはジャニーズ初の現役慶応大生アイドルが誕生する」なんていうプチ情報もある。
 その芸能人棚の下が相撲棚で、そこを整理していたら、内館牧子『あなたはいないけど…』(NHK出版)が掘り出された。なんで、この手の本が相撲棚にあるんだろう……。あ、そうか。内館さんは以前に横綱審議委員をされていた。その関連でここに収めたんだ。
 その中に、ご自身の脚本「…ひとりでいいの」(土曜グランド劇場)のこんなエピソードを紹介していた。

 恋に破れた娘(沢口靖子)が生きる希望を失って居間で泣いている。母親(吉行和子)は何も言わず強引に娘を彼女の部屋に連れて行く。そして、タンスや押入れを開けて、娘の洋服を全部引っ張り出す。春夏秋冬の服、オーバーコートから水着、下着にいたるまですべてぶちまける。わけがわからずに突っ立っている娘に母親は「全部整理しなさい」とだけ告げると出ていったのである。一人残された娘は足の踏み場もない洋服の山を呆然と見ていたが、やがて仕方なく整理を始める。
 そして、すべてを整理し終わった後、生きる気力を少し取り戻している。というような素敵なシーン。

 掃除、整理、整頓、模様替え……そんなことを一所懸命にやっていると、不思議なもので心が晴れてくる。この内館ドラマでこれは永平寺などで行われる作務を象徴していると思われる。春夏秋冬毎日行われる全山作務を「春夏秋冬の服」「洋服の山」で現している。
 
 図らずも、ワシャは書庫の掃除で、沢口靖子や雲水と同じことをしていたのじゃ。日日これ修業ですな。なんまんだぶなんまんだぶ。

 およよ、そんなことを言っていたら沢口靖子の本を掘り出してしまった。
沢口主演の『天然女房のスパイ大作戦』のパンフレットである。これがね……おっと、また長くなるのでこのあたりで止めておきましょう。