岡崎にて

 四代目市川猿之助松竹大歌舞伎「獨道中五十三驛」(ひとりどうちゅうごじゅうさんつぎ)を観劇するために岡崎市民会館
http://shiminkaikan.com/index.html
に出かけた。
 歌舞伎はおもしろかった。四代目は三代目のDNAを色濃く受け継いでいて、不惑をこえていい味が出てきた。三代目が病に倒れて以来、澤瀉屋はどうなってしまうのか心配だったが、これでなんとか盛り返してくれることだろう。
 三代目が育てた「二十一世紀歌舞伎組
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~ukon/21/index.html
春猿笑三郎、笑也、猿也たちはベテランの域に達していて、四代目を支えるいいバイプレーヤーになった。
 春猿は40代の半ばをこえた。現在、姐さんをやらせたら間違いなく五本指に入ってくるいい女形になっている。
 中津川出身の笑三郎春猿と同年代で、この人も女形としては熟成してきた。切れ長の目がいい。三代目の薫陶を受けているので役者としての基礎ができている。
 笑也は三代目がもっとも女形として期待していた人材だ。ワシャも笑也、春猿笑三郎の順にファンだったが、年齢を重ねて男顔が強くなってきたのう。20年くらい前に歌舞伎友達に「笑也は男顔」と言われて、「そんなことないぜ」と否定したものである。しかし久しぶりに見て、「確かに男顔だな」と思ってしまった。男の輪郭が出てくると姫は難しい。
 猿也は相変わらず太っちょだ。ぽっちゃりしたまま貫録がついてきた。
 三代目の弟子の筆頭の右近である。右近は今回の松竹大歌舞伎には出ていないが、これから右團次を襲名し、厚みをどんどん増していくことだろう。三代目の育てた澤瀉屋は元気だ。役者の薄い歌舞伎界を澤瀉屋一門がなんとか支えていってほしい。
 今回は、AプログラムとBプログラムがあって、猿之助と巳之助が昼夜で役を交代する。ワシャが観たのは昼の部で、十三役早変わりの猿之助はよかった。巳之助は老婆と猫の怪(化け猫)をやったのだが、これがまったく練れてない。はっきり言うと下手である。歌舞伎が浮いている。ワシャを含めてオールドファンは先代の化け猫を楽しんできた。目が肥えている。今回も四代目や巳之助をとおして三代目の猿之助を観たいと思っていたのだ。四代目ももちろん三代目ではない。しかしその匂いのようなものはまとっていた。その点、巳之助は甘い。三代目を感じるものはなにも身についておらず、そればかりか三津五郎の匂いもまったくしない。松緑あたりの指導でも受けたのかなぁ。声や動きが松緑になっている。これはまだまだ精進が必要である。舞の名手と言われた父親を抜くには、かなりの歳月が必要だろう。
 そんなこんなを含めても久しぶりの猿之助演目はよかった。

 しかし、市民会館の対応が悪かった。岡崎市民会館は山の上である。立体駐車場と平面駐車場とがある。どちらも入口はひとつずつで細い坂道の途中にあるから、入るのにとても不便だ。これを不慣れなシルバー人材センターのお爺さんたちが捌いている。要領も段取りも連携も悪く、駐車場は大混乱だった。入口のお爺さんは「満車!満車!」と入口に立ちふさがる。そこから20mほどの先で車を誘導するお爺さんは「入れて!入れて!」と声を出している。入口のお爺さん、右折車、左折車双方が入場しようとしているので、てんぱっている。奥のお爺さんの声はおそらく聴こえていない。入りづらい駐車場の上、駐車台数も少なく、他の駐車場に誘導するにも道がない、こんな使い勝手の悪い市民会館も珍しいなぁ。これでは駐車場整理のシルバーの皆さんがかわいそうだ。
 当日、開場13:00、開演13:30だった。駐車場が足りないことは先刻承知しているのだろう。全席指定なので並ぶ必要はないのだけれど、それでも早めにきたお客さんが開場20分前には入口の行列をつくっている。ワシャと友だちは行列に並ぶこともなく、隣接の施設を見学して暇をつぶして待った。
 13時を回った。行列は動き出した……え、動かない?どうしたのかにゃ。13時15分を過ぎた。動いているようには見えるがとても緩慢だ。もう開演時間が迫っている。どういうことだろう。ワシャは遠くにいたのだが、入口近くまで行ってガラス越しに中の様子をうかがう。
 最悪だった。入口は2重のガラス扉になっていた。表側は2カ所を開けている。だから行列は2列できる。当然ですわな。しかし内側のガラス扉は1カ所しか開いていない。そこでボトルネックになっているので、入口前は大渋滞となっている。
 それもだ。両側から入口を狭めるように机を出してそこに左右3人合計6人のスタッフが並ぶ。三人がそれぞれチケットをもぎればいいのだが、これがまた最初の一人だけでやっている。2番目のスタッフはチラシを渡す係、3番目のスタッフは2番目のスタッフにチラシを手渡す係、なんじゃそれ。3人もぎりにして、奥のロビーへ客を誘導し、そこでチラシを渡せばいいのに。
 おいおい、開演5分前になっても中に入れないお客さんがいるではあ〜りませんか。さっさと2つ目の入口を開けて、奥で暇そうにしているスタッフにチケットのもぎりをさせろよ。
 実際に開演に間に合わなかったお客さんがいた。それじゃダメじゃん