いつまでも運動ごっこ

 昨日、文房具と靴下が欲しくなったので、大型ショッピング施設に行った。フリクションペンを3本とグレーの靴下を4足、雑誌を3冊購入した。
「あ、三ツ矢サイダーも買おう」
 そう思いついて、食品コーナーに回る。レジ横でカゴを取ると、目的は三ツ矢サイダーだけなので、鮮魚コーナーも肉も野菜もすっとばすつもりだった。ところがどっこい、肉コーナーで足がピタリと止まった。生ハムが買いたかったわけではないですよ。流れてくる音楽に足を止められたのである。「なごり雪」だった。それも伊勢正三の声だったので懐かしかった。季節感もちょうどぴったりだし、気分の悪いこともあったので、ついつい自由だったあの時代が思い出され、しばし聴き入ってしまった。
 次の惣菜のコーナーでは「『いちご白書』をもう一度」がラジカセから流れている。おいおい、昭和の懐メロ大会かい。これはまた青春の名曲中の名曲だ。惣菜を買い求めるオバサンに邪魔にされながらも立ち尽くしていた。おかげで癒された。
『いちご白書』は1970年に公開されたアメリカ映画である。それを学生の恋人たちが観に行った。その頃の回想を男のほうがしている……という歌である。この男、「学生集会へも出かけた」と言っている。少し赤色に染まりかけたが、就職が決まった時にばっさりと髪を切っている。今のシースルーだっけ、国会前でお経を唱えているガキよりも潔い。
 おそらく髪を切った学生は、どこかの会社に入って、半世紀を一所懸命に生きた。年代的にいえばもう退職をしている。東京の郊外の小さな家を買って、おそらくは孫もできて、小さな平和の中で暮らしているのだろう。

 かたや髪を切らず(象徴的な意味でね)、あこがれの(笑)北朝鮮に飛んでいってしまったバカもいる。1970年3月31日の「よど号ハイジャック事件」の共産主義者同盟赤軍派の田宮高麿たちである。この間の蓮池薫さんの話によれば、未だに平壌で暮らしているのだそうな。牢獄のような国家から、日本に帰国したがっているそうだが、帰国すれば逮捕され、年齢のことを考えれば、死ぬまでやっぱり牢獄暮らしとなる。日本人拉致に深く関与していることを考えれば当然の結果だ。