弥栄(いやさか)

 天長節。おかげさまで、久しぶりに何もない休みになった。弥栄弥栄。
 朝もゆっくりと寝ていた。起きてきて、玄関の姿見でふと我に返る。いやー髪の毛がぼうぼうではあ〜りませんか。ずいぶん伸びましたな〜。
「新しき年も近いことだし、ちょいと髪結にでも行ってくるか」
ということで、近くの理容室に電話をした。そうしたら「今日は立て込んでいるので、今すぐ来られるならいいよ」とのことだった。だったら「すぐ行く」ということになって、自転車で5分程のいつもの理容室に走って行った。
 それから2時間、爆睡しましたぞ。気がつけばアフロヘアーが完成していた。わけはないか。
 最後にマスターが、肩をほぐしながら、「お忙しいですか」ときく。
「いや、そんなこともないんだけどね」
 マスターはいつもより長めに肩をもんでくれている。
「ずいぶんこってますよ」
「こってますか」
 首筋も丹念に押してくれたので、かなり楽になった。
 
 鏡に映る己の姿は、悲しいかな年々見た目が草臥れていく。でもそれは仕方のないことで、生きとし生けるもの「老」から逃れられることはできないのだから。でもね、目だけはいつも毅然としていたい。目が死んだら駄目だと思っている。志が目から吹き出すような、そんな表情で生きたい。
 今日の鏡に映っていたワルシャワ君の目は半分眠っているような目だった。けれど、肩をほぐしてもらって、椅子を立つ時には「キラン!」と光ったのだった。
 よし、今日も一日がんばるぞ。