春の眺めは価千金〜

 大百のような頭になっていたので、昨日、いつも行っている理容室に顔を出す。そこはマスターと奥さんと息子の3人でやっていて、けっこう客足が途絶えない。だからいつも予約をしてから立ち寄ることにしている。
 60代半ばのマスターは、昔からの常連客対応で、40になったばかりの息子は若い客を担当している。奥さんは、その時々の状況に応じて、マスターのフォローに回ったり、息子の手伝いをする。床の髪の毛の掃除や、お茶出しなんかももっぱら奥さんの仕事のようだ。
 ワシャは息子の受け持ちで、その理髪店では、どちらかというと若手の部類に入れてもらっている。だから、必然的に息子との会話が多くなる。新規開店した居酒屋のネタとか、コンビニの美味いものランキング情報とかはかなり詳しい。ゲームやアニメも得意分野らしく、ワシャの知らない話をよく披露してくれる。
 ところが昨日は、奥さんのちょっとしたキーワードに反応してしまい、いつもは話さない奥さんの話をずっと聴くことになってしまった。
 今週の火曜日に業界団体の慰安会があって京都に行ったそうだ。ワシャは「京都ね、ふ〜ん」って聞き流した。それからどこへ行って、どこへ行って、などと話していたが、ポカポカ気持ちのいい日だったので、うつらうつらで聞いていた。だが、「萬亀楼で昼飯を食べた」と言われた時に、「萬亀楼!」と椅子から飛び上がって反応してしまった。
 まあ、萬亀楼は有名ですよね。でも普通なら「萬亀楼、ふ〜ん」と聞き流すか、「老舗の味はどうだったの?」くらいの応答が適当なところだろう。しかし、ワルシャワのリアクションは大きかった。
 たまたま、その前日に風呂で読んでいたのが、池波正太郎『食卓の情景』(新潮文庫)である。その中に「京の町料理」というエッセイがあり、どんぴしゃり、「萬亀楼」の話だった。
 だからの「驚き」なんだけど、おそらく奥さんは、水曜日、木曜日と、客の何人かに、その話を振ったのだろう。実際にワシャの次に座った客にも「萬亀楼でお昼を食べた」とか話しかけていた。その客は、まさに「ふ〜ん」と答えていたもんね。ワシャの場合は「萬亀楼」に思わぬ興味を示した。結果、奥さんはスマホを持ちだして、いろいろと写真を見せてくれることになったのだった。いつもなら1時間半くらいで終わる床屋が、2時間半を過ぎてしまい、買い物に行けなくなってしまいましたぞ(泣)。

 う〜ん、「とんねるずのイジメ」や「ゲス不倫」のことも書きたかったが時間が尽きた。それはまた明日のココロだ〜。