冒頭のご挨拶

 昨日、100人ばかりの社員の前での説明会があり、その冒頭に話をする機会があった。時間は10分程度、基本的にワシャはアドリブがきかないので、原稿はきちんと作って臨んだ。
 まず、ワシャの前に財務・経理系の役員が話す。手堅く、しっかりした内容で、配布した資料を基にしてわかりやすい。だが、5分過ぎからちらほらと舟を漕ぐ人間が見受けられる。
 次がワシャだった。先日、滝川鯉昇の落語を聴いたばかりだったので、肩の力を思いきり抜いた感じでぼそぼそと話し始める。完璧な原稿は机に置いてあるが、それはあまり見ない。要点だけを確認する程度で、あとはフラ〜フラ〜と適当に話す。
 ギャグも仕込んである。これも原稿にはきっちりと書きこんであるのだが、そんなそぶりは見せない。「美容院」のことを「女性の皆さん、行くでしょ。パーマ屋さん」と、古い言い方を使って軽く笑いをとる。真面目な説明会などではこれだけでも笑いが起こるんですよ。ありがたいこっちゃ。
「え……パーマ屋さんじゃだめなの?最近は何ていうの?」
 と、すっとぼけると、隣に座っている部下から「美容院ですよ」と合いの手が入る。
「あ、理容室?」
「美容院!」
「あ、そうそう美容院、美容院、どうも失礼しました」
 と言って、笑うと、会場がどっと和む。そうなったらこっちのものである。身振りもまじえて、
「美容院に行くと女性の皆さんは、こんなでかいお釜の大きいヤツみたいなのをかぶるでしょ。そのお釜に時間がかかるんだよね。だから、脇にあるマガジンラックから雑誌を手に取りませんか」
 と言いながら、机の下からおもむろに『婦人画報』を取り出して見せる。
「これは『婦人画報』ですが、こういったファッション雑誌を読むんじゃないですか」
 雑誌を高くかざして会場に見せる。もう寝ている人は居まへんで(自慢)。
 実は、この雑誌に我社の関連記事が載っているのだ。そのことを言いたいために、長々と回り道をしてきた。
 こういった雑誌に取り上げられれば、広告宣伝費はタダである。智恵を使えば、全国発信のPRだってできる、最後にそんなようなことを言って話を終えたのだった。