階段にて

 昨日も凸凹商事本社で大きい会議。それでも1時間程度で終了した。大きな会議室は6階にあって、そこから1階まで階段で下りてくる。6階で、仲のいい社外委員と会った。
「ワシャさん、新年会、よろしくお願いします」
 すでに、会社の仲間内で「情報交換会」と銘打って、酒を呑む会を立ち上げてある。そのことを言っているのだ。
「了解しました」
 と、会釈すると5階に降りた。
 5階で、別の社外委員とすれ違う。ワシャよりもずいぶん若いのだが、それでも40を超えて、人物が練れてきたように感じる。あとは微量のスパイスがきいてくると、委員としても、その上としてもいいポジションがねらえるのだが。そんな思いもあって、この人と呑むと、説教ばかりになってしまうのだが、それでも「また呑みましょう」と言ってくれるのでありがたい。
 3階まで下りると、2人の男が待っていた。一人は、有能だが、やっぱり支店に飛ばされている課長(後輩)である。でもね、彼はそんな境遇をものともせずに楽しく仕事に取り組んでいる。大物と言っていい。その男なら、状況さえ変われば必ず頭角を現していくので、心配はしていない。その男には親会社の本部長との忘年会を頼んでおいた。その報告に大会議終了のタイミングをねらっていたのだろう。
ワルシャワさんの日程が合わないんですよ(泣)」
 調整屋のワシャは、年末年始は忙しいのだ。結局、年内は無理で、新年あけに持ち越すことになった。
 もう一人の男は、7年前にワシャの部下だった男である。巨体をもじもじさせながら、ワシャと課長の話が途切れるのをまっている。
 その部下だった男、2か月前の会社の宴席で、対応が悪かったので「ぶち怒った!」。そしたら、怒っている最中に涙を流したという経緯があった。それ以来、顔を合わせる機会がなかったので、会話を交わすのは2か月ぶりだ。リベンジで待ち伏せをしておったか。大きな体をゆすってその男が近寄ってきた。
ワルシャワさん、この間はすいませんでした」
と、巨体をちぢこめて平身低頭するではないか。これには素面のワシャも、
「いやいや、ワシャも酔っていた。最近、呑むと癖が悪くなってね。ご寛恕くだされ」
 大人風を装う。
「叱られるのが久しぶりだったので、ちょっと感動しました」
「ごめんごめん、最近ね、酒が過ぎると些細なことでイライラするようになってしまった。年齢かな、アハハハハ」
 と、笑ってごまかした。
「昔からそうでしたよ、呑むと恐かったです。相変わらずお変わりないな〜、と思ったら懐かしくって、つい涙ぐんでしまいました」
 え、ワシャって7年前から、そんなんでしたっけ(汗)。進歩していないと……。
「酒は飲んでも呑まれるな」。最近、解ってきましたな。お銚子やビールでの注ぎあいでは、負けん気が先に走り、美味くもない酒を飲み過ぎ、恐いオッサンになってしまう。チビチビと4〜5合を、肴を食べながら2〜3時間かけて楽しめば、まったくやさしいワルシャワで過ごせる。
 宴席では注がれるな、二次会には行くな、これは鉄則だな。