二子玉川のシナモンロール

 昨日の研修はおもしろかった。まず、自分の変化に気付いたいい機会だった。ワシャは講演会とかセミナーに出かける際に、必ず講師の本を買って、読んでいくことにしていた。それは十数年前からそうい癖をつけてきたので、身についているものだと思っていた。重要なのは本を買っていくということ。昨日の講師の本だって1冊2000円程度である。それを今回図書館で借りるという間違いをおかしてしまったのだ。
 読んではいる。だから講演の内容の理解も進んだと思う。でもそれだけで終わったのである。以前のワシャなら、本をもって講師のところに走り「サインをいただけますか」と付箋のついた著書を出していた。そうすると自然に名刺交換ができ、こちらのことを相手に印象づけることができる。これでネットワークを拡大してきた。メールを出しても門前払いを食らうことがなくなる。
 それが図書館の本ではダメでしょ(泣)。サインしてもらえない。もちろん講師にアピールしても借りてきた本ではインパクトがない。そんなこと百も承知していたつもりだったが、昨日はそれを怠ってしまったわい。
 研修、セミナーについて甘さが目立っている。緊張感が失われたか、ワシャの頭がボケてきたか。おそらく両者が混在しているのだろう。

 昨日の講演会でいい話を聴いた。講師は昨日も紹介した元スターバックスコーヒーのCEOの岩田松雄氏である。話の概要は、「組織の経営層としての覚悟」のような話だった。しかし、少なくともワシャは経営層ではないし、単なる駒に過ぎないと思っているので、講師の助言をなかなか実現できそうにない(苦笑)。
「風通しのいい組織をつくれ」
「経営層は感情的な怒りを下に見せてはいけない」
 というのには共感した。経営層がいらいらと怒り散らすのはみっともいいものではない。
 それはさておき、「二子玉川シナモンロール」の話である。岩田氏がCEOだったときに、岩田氏宛てにある女性から手紙が届いたそうな。ざっとした内容を記す。聞き覚えなので、細かい点はご容赦。
「私と娘は、スタバの二子玉川店が大好きで、よく通っていました。娘はそこの店員さんのFさんもとても気に入っていて、何度も足を運んで、コーヒーとシナモンロールを美味しくいただいておりました。
 娘は心臓が悪く移植手術を受けなければ長く生きられない状態でした。日本ではなかなか移植手術が受けられないので、アメリカに渡って手術の順番を待とうということになりました。
 アメリカに渡航する前日の夜に、娘は『渡航する前にスタバのシナモンロールが食べたい』と言い出しました。翌日は、成田空港まで行かなければならず、朝が早いのでスタバは開いていません。でも、私としては、娘にシナモンロールを食べさせたくて、Fさんに相談したところ、二つ返事で了解してくださいました。翌朝一番で、もちろん、スタバは開いていませんでしたが、Fさんはシナモンロールを焼いて、それを娘に渡してくれました。娘は美味しそうにそれを食べとても満足そうでした。
 残念ながら娘は手術ができずに、アメリカで亡くなりましたが、うれしそうな娘の最後の姿を思い出し、一筆したためた次第です」
 ざっとした内容といいながら、長くなってしまったが、おおむねこんな話をされた。いい話だった。
 岩田さんは言う。
「この話に出てくるFさんのやったことは社員としてはダメなんです。営業時間外に商品を売る、これはスターバックスのルールを逸脱しています。私は経営者として、ルールを守らなかった彼女を叱らなければならない。しかし、叱りませんでした。逆に褒めました。Fさんのとった行動は、社のルールには違反しましたが、人として最高の行為だったと思います。杓子定規ではない思いやりのある対応は素敵な行動でした。私はこの手紙を全社に周知しました」
 こういった社員がいるかぎり、スターバックスは大丈夫だと思った。これはもちろんそういった社風を創り上げた経営層の力量であることは間違いない。
 うらやましい(笑)。