場所ははっきりしている。エストニアとロシアの国境の町である。
時代ははっきりしていない。ただKGBが走り回っていたので、おそらくソビエト連邦の崩壊前だろう。
夜である。ワシャは一軒の民家の地下室にいた。階段を上がって、アルミサッシのドアを通って外に出た。そこは6mほどの街路で、左右に住宅をはりつけて闇の先までずっと続いていた。でも、その家並はどう見ても日本の街だった。
ワシャはその道を走り始めた。何かに追われているのだ。背後を振り返ると、2台の車のヘッドライトがこっちに向かってくる。
「KGBだ!」
なんでそう思ったのかわからない。とにかくそう思ったんだから仕方がない。ワシャはKGBから逃れるべく、家と家の間の路地に入りこんだ。車は街路を過ぎていく。
よし、やり過ごした。路地をひたすら走って、また街路に出る。ほっとしていると、街路の先にヘッドライトが現われて、こっちに向かってくではないか。またワシャは走り出す。必死にヘッドライトから逃げていたら、目が覚めた(笑)。枕元の時計を確認すると午前2時30分だった。
仕方がないので、それからずっと本を読んでいましたぞ。やれやれ。