八木一夫の話と思わせておいて

 先週の日曜にNHKのEテレで「日曜美術館 40年記念」が放送された。
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2015/0614/
テーマは八木一夫、彼の作品「ザムザ氏の散歩」なら、どこかで見たことがありませんか。
http://www.museum.or.jp/modules/im_event/?controller=event_dtl&input%5Bid%5D=20551
 このサイトの右上の写真がそれ。八木は土によってこの作品を制作した。茶陶とは一線を画し……というより宇宙を別として造形活動を続ける。
 この天才について、日曜美術館司馬遼太郎が語っていた。1981年というから34年もまえの映像だった。そういえば画面の中の司馬さんもお若い。
 司馬さんは、八木一夫について『歴史の世界から』(中公文庫)と『微光のなかの宇宙』(中公文庫)に書いておられる。前者は八木の生前に書かれており、後者は亡くなった後に書いた。後者の巻末の文章である。
《ともかくも八木は有形、無形の古典のなかのもっとも良質なものを豊潤に吸い込んだまま、しかも二十代の感受性を先年ももちつづける勢いを示しつづけたまま、にわかに死んだ。私はこのように世に居て、唯一の経験として天才が死ぬという衝撃を真向からうけさせられた。
 あとは、作品の中だけ八木一夫がいると思って生きていくしかない。》
 司馬さんは八木のことを天才と呼んでいる。司馬さん、自分のことを天才だとは爪の先ほども思っていない。八木さんはもちろん天才だが、それを評している司馬さんも、とんでもない天才なのにね。
 司馬さんが亡くなられて、あとは、作品の中だけに司馬遼太郎がいると思って生きていくしかない。