美の壺

 NHKの「美の壺」がおもしろい。
http://www4.nhk.or.jp/tsubo/5/
 これだけでも受信料を払っている価値があるわい。
 草刈正雄が案内役となっていろいろなテーマを掘り下げていく。掘り下げるといっても、あくまで初心者向けであり、その分野をまったく知らない素人に小さなランプを付けて見せるくらいの30分番組。なにしろ小難しくないのがいい。
 昨日のテーマは「苔」だった。「苔盆栽」「苔寺」「龍安寺の石庭と苔」などが取り上げられていた。いつもどおり座椅子にもたれてテレビを見ていたのだが、画面が切り替わって、ワシャは背筋を伸ばしてシャキンとしたのだった。なぜか。それは画面に司馬遼太郎さんが映し出されたからである。
番組は、司馬遼太郎の「街道をゆく」を持ってきた。その第18巻「越前の諸道」(朝日文芸文庫)の表紙
http://publications.asahi.com/kaidou/18/index.shtml
が、福井・平泉寺(へいせんじ)の杉木立と苔むした斜面の写真となっている。そこらあたりからNHKのディレクターが探してきたかな(笑)。
テレビ画面には、表紙と同じ風景が映しだされた。その画面を見つつ、司馬さんの平泉寺の描写を読めば、趣深いことこの上ない。少し引く。
《ともかくも、すぐれた苔が育つのに、この環境は絶好の条件がそなわっているのにちがいなかった。ほどよく間隔をとって根を張っている杉の大木が木漏れ日をおとしてなまな日航が直射するのをさえぎっているものいいし、それにこのひろい緩傾斜地全体として陰気でないことも、苔にはいいのであろう。》
 永平寺に続く前段として7ページにわたって越前の苔寺について書かれてある。もともとのルーツを越前にもつワルシャワ一族としては、とても懐かしい心の風景だった。