ワシャは元気なんですけど

 午前4時頃に一度目が覚めたのだが、トイレに行って戻ってきたらまた眠ってしまった。気がつけば午前8時だった。休日という安ど感からか、いやーよく寝たわい。
 でもね、一度目はぐっすりだったが、二度寝では夢を見ていた。今朝の夢には「嫌な奴」は出てきませんでしたぞ(笑)。
 先日、会社のOBの方から電話があった。用件は「久々に飲もうじゃないか」ということである。そのOBの方の話によれば、何人かの先輩が集った時に、ワルシャワと飲みたいと言うことになったらしい。ありがたいことである。
 中には、10年前に退職をされた伝説の部長もお見えになるそうで、これは楽しみだなぁ。ワシャが30代の頃に上司だった。おそらく今の会社でもっとも影響を受けた人物である。豪放で磊落で、しかし繊細で、上司に楯突き、部下を守り、嘘をつかず、飲み屋で偉そうに後輩いじめをする連中と喧嘩ばかりしていた人だったなぁ。

 昨日は雨が降っていた。その午後のことである。所用で本社に顔を出す。終業ベルを聞いて、打ち合わせを終えた。鞄や資料を抱えて、どしゃ降りの中を自転車置き場に行き、いつ戦争になってもいいように買い求めたモスグリーンのカッパ上下を着用する。ワシャは基本的に半径2〜3キロの範囲は雨が降ろうと槍が降ろうと、自転車で移動することにしている。そのほうが、時間的に早いし、渋滞に巻き込まれてイライラすることもないから、精神衛生上もいい。
 そこで雨音を聞きながら、カッパを着ていると、後輩の課長が傘をさして通りかかった。どうだろう、ほんの3mくらいのところをである。ゆっくりと歩いていく。いつもはきびきびとした男なんだけどね。
「よう!」
 と、声をかけると、ワシャの方を見て、ハッとしたようだ。いつもならここで笑顔を見せる男なのだが、顔色も悪く元気もない。
「どうした?」と、尋ねると、小声で「忙しくて……」と、答える。
「忙しいか……まぁがんばれ」
 ワシャがそう言うと、後輩は、少しだけ笑って去っていった。

 終業ベルを聞くまで、打ち合わせをしていたと書いた。その打ち合わせに同席した課長がいる。彼も有能な社員なのだが、今日は妙に無口になっていた。上司が同席していたということもあろうが、いつになく元気がなかった……ような気がする。
 自転車置き場の課長も、打ち合わせで同席した課長も次の時代をになう優秀な社員だ。彼らに弾けるような元気さがないと、これはいささか不安だ。組織の勢いというのは、中隊長あたりの元気さにかかっていると思う。たまたま雨だったので憂鬱だった、というのならばいいのだけれど。