お仕着せ

 先日、某所で仲間と飲む。それ自体は楽しかった。でもね……
 三河南部の私鉄駅前、駅から西にすぐのところに小奇麗な料亭がある。座敷から見る庭が手入れされていて飲むシチュエーションとしてはいい。部屋のしつらえもわるくない。
 それはそれとして、引っ掛かりはのっけにきた。友人が飛騨の濁り酒を持参していたのだ。500ccの瓶だったので大した量ではない。それでも黙って飲むのもせつないので、帳場に持ち込みを告げる。
 気のきいた店ならば、「どうぞ」てなもんだ。ところがその店では「2000円を貰い受ける」と言ってきた。おいおい、なにも一升瓶を持ち込もうっていうんじゃないんだぜ。500ccなぞ、6人で注げばあっという間になくなっちまう。その瓶を見せたら、「じゃ千円で」ということになった。ふ〜ん。
 それから宴が始まった。濁り酒で乾杯して、生ビール、熱燗と酒をすすめた。しかし、ワルシャワ的には食うものがあまりない。お仕着せの料理ってあんまり好きじゃない。どうもワシャにはお仕着せ料理、お任せ料理、コース料理、食べ放題というのが肌に合わないというか、舌に合わないというか、性格に合わない。
 たしかに見た目には上手に造ってありますよ。いろどりもよく、いろいろなものが並べられている。でもね、鮎の塩焼きはこの時期に食べたくないし、定番でついてくる茶碗蒸しも無視したい。その瞬間に食べたいものをメニューの中から選んで、それを食べながら酒を飲みたい。ほんの少しの飾らない肴があればいいと思っている。