ミレニアム

 社会学の泰斗で東京大学名誉教授の三田宗助氏とその弟子の大澤真幸氏の共著に『二千年紀の社会と思想』(太田出版)がある。その本に関して、太田出版のサイトにこんな言い訳が載っている。
http://www.ohtabooks.com/press/2012/04/16124055.html
 なんだか苦しい言い訳だ。
《ご指摘のように辞書的な定義では、「二千年紀」とは「西暦1001〜2000年」を示す言葉です。》
 まったくそのとおりで、それ以外の意味はない。
《しかし、「三千年紀」という表現は日本人には耳慣れないものであり、むしろ現在の私たちには関係ない内容だと誤解を与えかねません。》
確かに「二千年紀」「三千年紀」という言葉はあまり一般的ではない。
《著者からも、「2000年代」という意味を込めてこの言葉を使いたいとの提案があり、こういった表現を採用いたしました。》
 読者はバカだから、「三千年紀」と言うと「3000年代」のことを言っている、3001〜4000年と思うので「2000年代」という意味を込めて「二千年紀」と書いたと言い訳している。
 確かに一般的ではない。ワシャも呉智英さんから指摘されて「あ、そうだ」と思い出したくちだ。一般に読者の認識はそんなものだろう。でもね、その読者(日本人と言ってはいるが)を引き合いに出すのはいかがなものだろうか。
読者のことを気にしているのなら『三千年紀の社会と思想』としておいて、帯かどこかに、「三千年紀は2001〜3000年のこと」と書いておけばいい。そうすれば賢明な読者は「AD1〜1000年までが最初の千年紀なので、今は三千年紀だな」と理解するわさ。
 単純に著者、出版社が「二千年紀」「三千年紀」を知らずに、そして調べもせずに、あるいは一番大事なタイトルを「誤記」しましたという話ではないか。

見田、大澤ご両所は、専門分野での学殖・知識はあったものの、教養がなかったということであり、この本は見たくもない本になってしまったことだろう。