吉田日出子さん

 12月13日号の「週刊現代」を深田恭子のグラビアに目が眩んで購入する(笑)。
 あとで気がついたのだが、この号に、女優の吉田日出子さんの「高次脳機能障害」についての告白が掲載されていた。

 吉田さんは、劇団自由劇場出身の個性派の女優で、バイプレーヤーとして存在感のある人である。ワシャ的には、「男はつらいよ」の第44作のマドンナが印象に残っている。吉田さんのあのふにゃふにゃとした言い回しで、寅次郎に迫っていくところなんざ、歴代マドンナの中でも極め付きに個性派だ。

 その吉田さんが「高次脳機能障害」で、記憶を失いつつあると言う。その症例が紹介されていた。
《パーティにお呼ばれして、何日も経たないうちに、あれ?パーティはいつだっけ?と、ふっと記憶の一部がかき消されたかのように思い出せなくなったことがありました。たとえメモ書きしても、これでいいんだっけ?と、メモする端から不安になってしまう。》
 前段なら、ワシャでもしょっちゅうある。しかし、後段の「メモをする端から……」は、吉田さんの病状の深刻さを物語っている。
《車で稽古場に向かう途中、通い慣れた道なのに、ふっとわからなくなってしまったんです。》

 吉田さんの病状は進行している。記憶力だけでなく判断力も失われていくらしい。おそらく女優としての再起は、70歳という年齢からいっても難しかろう。そのことに吉田さんは自覚的である。そして文章をこう結んでいる。
《私がもう舞台に立つことは難しいだろうなとわかっているけれど、でもそこのところは曖昧にしておきましょう。わからないよ、どこかにこそっと出ているかもしれないよって。》
 お茶目なしめである。あわせて前向きでもある。見習わなければ……。