歌舞伎メモ

 12月歌舞伎座昼の部の演目は、
http://www.kabuki-za.co.jp/
「源平布引滝」(げんぺいぬのびきのたき)
「幻武蔵」(まぼろしむさし)
「二人椀久」(ににんわんきゅう)
となっている。

 昼の部の最初の演目「源平布引滝」は「義賢最期」(よしかたさいご)である。
 物語は、源平合戦より少し前の時代。平治の乱源義朝を討った平清盛だったが、
布引滝(新神戸駅から10分くらいの六甲山中にある)の竜神の神託によれば、平家滅亡が近いという。余談ですが、この滝は那智、華厳とならぶ三大神滝なんですね。
 この神託に怒り狂った清盛は、滝の中から手に入れた源氏の白旗と宝刀を破棄するとともに、源氏の流れをくむ者を根絶やしにするよう命じる。ところが、肝心の源氏の白旗と宝刀を何者かに奪われてしまった。
 そういった前提があって「義賢最期」の物語が展開していく。

 源義朝(頼朝、義経の父)が知多半島で討たれて以来、弟の義賢は平家に降伏し武蔵国比企にある大蔵館に引きこもっていた。義賢というとあまり馴染みがないでしょうが、木曽義仲の父親といえば分りやすいだろう。その義賢を愛之助が演じる。
 奴の折平(亀三郎)が、実は源氏の嫡流の末裔、多田蔵人であることが分かり、「お互いに源氏同士じゃないか〜」と打ち溶け合って思いを語り合う。
 そこへ、清盛の手の者が源氏の白旗の詮議にやって来る。義賢を疑い、兄義朝の首を足蹴にして潔白を証明しろと迫るわけだ。理不尽な仕打ちに思い余って、清盛の使いを討ってしまう。
「逃げろ」とすすめる蔵人だが、義賢は潔く討死すると言い張る。自分が盾となり、顔の知られていない蔵人を生かし、源氏の再興を果たしてくれ、ということなのである。そのことに納得をした蔵人は落ちていくのだった。
 遠くから攻め太鼓の音が響いてくる。義賢は、妻の葵御前とそのおなかの子(これが義仲)と最後の別れの杯をかわす。「無事に出産したら必ず旗揚げさせるのだ」と言いつけ、源氏の白旗を妻に渡すのだった。
 やがて平家方が攻め込んでくる。討死覚悟の義賢は防具もつけず応戦し、壮絶な最期を迎える。
 そんなお話です。

「幻武蔵」は新作歌舞伎である。玉三郎が演出をしている。
 物語は、宮本武蔵が姫路城の妖怪退治におもむき、天守に棲む小刑部(おさかべ)明神と対峙するというもの。武蔵を獅童が、明神を松也が演じる。玉三郎も「淀君の霊」として登場する。
 姫路城天守、霊魂と若者の対決、そして玉三郎となると、「天守物語」を思い出さざるを得ない。おそらくはその延長にある物語なのだろう。
 これは楽しみ。

「二人椀久」は舞踊劇である。椀久とは椀屋久兵衛のことで、この久兵衛海老蔵)が傾城の松山太夫玉三郎)に入れあげて、家業をかたむけたために座敷牢に押し込められ発狂してしまう。花道から現れる久兵衛がなんとなくヨレヨレなのはそのせい。松山太夫に焦がれつつ踊り、やがて疲れて寝入ってしまう。
 そうすると幻影の松山太夫が登場してくる。
「まってました!」
 二人は恋の華やかな頃を思い出し、その頃を再現しつつ華やかな舞を見せるのだった。
 でも、幻影はいつしか消えてしまい、一人残された久兵衛は、松風を聞きながら、寂しく泣き伏せて幕となりのであ〜る。