朝食の浴衣姿の恥ずかしさ

 昨日の話とは前後する。境港に出かける前の玉造温泉のホテルでのこと。
 朝7時に、食事の会場に行く。バイキングである。先日行った神戸のホテルの貧しいバイキングと違って、これでもかというほどの品数をそろえている。まぁたくさんあってもワシャが食べるのは、おかゆシジミの味噌汁。お菜は、6つに仕切られた陶製の皿に並べる。しらすたっぷりの大根おろしにホウレンソウの胡麻和え、レンコンの煮物に十六島海苔、しのだ巻きにいり卵というメニューである。う〜ん、ヘルシー!

 さて、早々に食事を終えて、モーニングコーヒーを楽しみながら、周りを眺めている。それにしても浴衣姿の男女が多いなぁ。
 ワシャは、温泉ホテルとはいえ、浴衣で部屋の外に出るのを好まない。もちろん温泉ホテルなので浴衣で部屋から出てもいいし、街に出たっていいんですよ。でもね、ワシャは、他人の眼があるところは、基本的に公的空間だと思っている。だから浴衣で外を歩くことに抵抗がある。
 ワシャの泊ったホテルはけっこう仕立てのいい生地の上等な浴衣を提供してくれた。湯上りに、パリッと糊のきいた浴衣を、角帯できりりと締めて……というならまだ許せる。それが一晩が過ぎ翌朝ともなると、浴衣は寝汗を吸ってよれよれになって、折り目も消えてしまう。膝の前はまるまり、膝の後ろは寝じわでしっかり撚れている。おっと、皿にお菜をてんこ盛りにしたオジサンは、兵児帯の先を引きずりながら歩いている。それはまずいでしょ。そんなだらしのない姿を人様に見られたくない、と思わないのかなぁ。

 さて、玉造温泉のことである。「出雲風土記」にも出てくるというからその歴史は古い。昭和の時代は、出雲大社、松江を含む出雲地方の観光客の大部分を吸収した山陰の中でも一流の温泉地と言っていい。
 玉造の地名は、古代に勾玉の生産地であったことにちなむ。なので、ホテルのロビーにも勾玉が商品化されたものがたくさんならんでいた。でね、ワシャはピン類が好きなものですから、勾玉のタイピンを、きれいな売り子さんにそそのかされて、ついつい買ってしまったのだった。ワシャの持っている安物のタイピンの中ではけっこう高い方でしたぞ(泣)。