静かなる武士(もののふ)

 それでものぞみに乗ってしまえばどうということはない。同行のメンバーが缶ビールやおつまみを買ってきていたので、それで早速祝杯をあげる。京都に着く前に、2本を飲む。新神戸までまた2本。岡山あたりで眠くなって、広島で目が覚めた。広島から本を読みはじめて、気がついたら九州に入っていた。名古屋から博多まで、3時間20分、あっという間とは言わないけれど、ビールと本があれば快適だわさ。
 博多到着が午後6時11分である。泊りは博多駅北西400mたらずのところにあるビジネスホテル。また「チャンワーチェンワー」の団体と同宿だと嫌だなぁと思っていたが、その日は「チャンワーチェンワー」の人はいなかった。そのかわり、高校生がやまほど宿泊していた。その理由は翌朝分かったのだが、その話はひとまずおいておく。
 同窓会というか、宴会は中洲鷹勝
http://www.takasho-k.jp/page0102.html
で盛り上がった。どうだろう、3時間以上はおだをあげていたのではないか。なにしろ北は北海道、南は佐賀県まで全国から集まっているから、お国訛りが飛び交う飛び交う。
 ワシャは愛知県でも西三河なので、ほぼ標準語だらぁ?ほいだもんで他のメンバーが何を言っとるのかよくわからんじゃん。「標準語でしゃべりん!」って言うだけど、全然、だれも聞いてくれんだわー。
 そんな感じで夜は更けてゆき、午後10時をまわって解散となった。いい酒を飲んでほろほろと酔ったので、そのまま宿に帰りましたぞ。あー楽しかった。

 翌朝はばっちり早起きをして、周辺を散策した。ホテルのすぐ西に臨済宗承天寺がある。ワシャは曹洞宗だが、同じ禅宗なのでちょいとのぞきに行き、ぐるりとひと回りする。
 おおお、このあたりが博多寺社町ですな。承天寺をはじめとして、多くの寺が立ち並ぶ。ホテルからすぐのところに、「博多千年門」が昨年建てられてた。観光客を寺町にウエルカムする門なのだそうな。
その門をくぐり、承天寺を右に見ながら遊歩道を歩いたのだが、なかなか境内が広く、森も深い。さすが1241年創建の古刹である。その先にも天徳院、円覚寺東長寺……聖福寺は通りからちょいと覗き見をしただけだけど、ここも鬱蒼とした森に抱かれて、趣のある禅寺の匂いがする。時間さえ許すなら中に入りた〜い。というかこの辺りでまるまる一日潰せるぐらい楽しそうだわい。御朱印帳なんかあっという間に満載になりそうだ。でも、早朝散歩でしかないので、朝食に合せてホテルにもどったのだった。あ〜残念。
 ホテルにもどってシャワーを浴び、レストランで朝食をとる。メニューは3つ洋食、和食A、和食B、バイキングを楽しみにしていたのだが、ダメだこりゃ。フランスパンとスクランブルエッグ、サラダにオレンジジュースという簡単な朝食を済ませて、コーヒーを飲みながら雑誌を読む。
 ふと目をあげるとレストランが紺色に染まっている。「なんじゃこりゃー!」と思ったら、レストランの予約席が剣道着姿の少年たちで埋まっていたのだ。どうやら福岡で剣道の大きな大会があるらしい。それにしても彼たちの静謐なこと、いかなかりであろうか。さすが武道をたしなんでいるだけのことはある。「チャンワーチェンワー」の人びととは根本的なところが違う。
 おかげでワシャは静かなコーヒータイムを過ごせたのだった。(つづく)