落語会

 夕べ、地元で落語会。瀧川鯉昇、入船亭扇遊、柳家喜多八などが出演する。
 鯉昇は、相も変らぬフワフワとした雰囲気で、客を鯉昇の世界に引き込んでいく。演目は「ちりとてちん」。知ったかぶりの男に腐った豆腐を食わせるという物すごい噺である。その臭いを嗅いだ時の鯉昇のしぐさと言ったら、これはCDでは絶対に伝わらない。その形相だけで大爆笑をとってしまう。
 酢豆腐を食わせる前に、灘の生一本を、鯛の刺身、ウナギのかば焼きを肴にして呑むところがあるのだが、これが実に巧い。見ているとついつい呑みたくなってしまうんですね。
 扇遊は「天狗裁き」を掛ける。熊五郎うたた寝をしていて笑ったり怒ったりしているのを見て、女房が「どんな夢を見たのか」と問う。夢を覚えていない熊五郎は「見ていない」と答えるのだが、女房は納まらない。隣家の男、大家、奉行、天狗が次々と聞き出そうとするのだが……という繰り返しの落語である。同じパターンの繰り返しなので、変化に乏しくワシャはあまり好きな演目ではない。
 喜多八は、廓噺の「お直し」でトリをつとめる。この噺は志ん生の十八番(おはこ)だ。羅生門河岸に見世をひらいた夫婦の人情噺である。「私は虚弱体質で……」から始まって、けっこう毒のあるまくらを展開しながら、古典の世界に誘っていく技は、さすが小三治の弟子だね。その中でも抜きん出ているのが喜多八で、小三治の「人間という存在のかわいさを描く」をしっかりと受け継いでいる。亭主の道楽で羅生門河岸まで身を落とす女房だが、これをかわいく演じている。その道楽者の亭主もけっして悪人ではなく、どことなく憎めないキャラクターとして造りこんであった。さすが喜多八。