ワシャはシールと闘った

 シールがベタベタと貼ってあったガラスをきれいにするというのは、なかなか大変な作業だった。シールは取れるのだが、接着部分が残ってしまう。これが手強い。最初はガラスクリーナーで試したんだけど、そんなものではビクともしない。ネットで調べると除光液が有効だということが書いてある。さっそく除光液を2瓶買ってきてそれを使う。除光液でも薄くはなるんですが、最後の曇りのようなものが取れない。なんだか斑になってしまう。ついには倉庫からベンジンを出してきて、これを布に含ませて拭いた。これでようやく接着部分がきれいになったわい。仕上げにガラスクリーナーで磨き上げればピッカピッカになった。それにしても両手が棒のようになっている。握力なんか、箸が持てないほど落ちているんだね。シールはがしは思った以上に重労働だった。
 午後からちょっとした所用で出かけて、夕方に戻り、テレビ桟敷に座った。今日は、何と言っても大砂嵐VS遠藤がある。これを見落としてはいけない。
 いい取組でしたぞ。立ち合いは大砂嵐がよかった。右上手をとっていい形になった。対して遠藤は半身で不十分な体制だ。大砂嵐、遠藤を正面徳俵まで攻め込む。遠藤、俵に詰まった。大砂嵐の圧力のある寄りをこらえながら、俵際で左足一本になりながらも大砂嵐をつきおとした。
 流れから行けば遠藤の敗けだった。しかし土壇場の土壇場で遠藤は踏みとどまり、大砂嵐は落ちた。これが勝負の妙味、厳しいところであろう。これで遠藤は4勝4敗の五分に持ちこんんだ。やわらかい体躯とうまさもあわせ持っている。楽しみな力士である。天性の勝負師の感のようなものを持っていると思う。
 アナウンサーが「大砂嵐の得意の右上手を取られた時はヒヤリとしましたか。星を拾いましたね」というようなニュアンスで聴いたそうだ。それに対して遠藤は、ニヤリと笑ったという。遠藤、闘いに余裕があった。それはテレビ桟敷からでもよくわかった。不利な体勢からでも勝機があれば、そこを逃さず勝ちにいく、これぞ勝負師。
 69年前の硫黄島でこの日、日本軍の守備隊が全滅した。しかし、小さな部隊はそれでも抵抗を続けている。度々日記に登場するが、バロン西こと西竹一は、「勝機があるうちは勝負を捨てない」と、この後、6日間も戦い、ついに矢折れ弾尽きて、微笑みを見せながら自栽して果てた。彼も勝負師だった。