脳と能

 宵に飲んだ酒がよほど心地よかったのか、久しぶりに昨夜は熟睡をした。身体から疲れが一掃されていることが実感できた朝は何日ぶりだろう。
 今かかえている仕事のほうもとりあえず峠を越えた。もちろんすぐに別なオーダーが降ってくるのだが、それまでの間、少し肩を楽にしておこう。
 そうそう、今朝、ポストから新聞を取り出すと、一緒に封書が入っていた。見れば脳ドックの結果表ではないか。長いこと待っておりましたぞ。それにしても時間が掛かりすぎだ。
 ま、いいや、とりあえずどんな結果判定か見てみようっと。
「異常所見を認めました。脳みそが八丁味噌になっています」
 そんなことはないか。
「所見は認められますが心配ありません。定期的に脳ドックを受診して経過観察されることをお勧めします」
 ふ〜ん、そんなところでしょうね。詳細説明のところでは「動脈硬化・脳血管障害の予防のために、高血圧、糖尿病、コレステロール中性脂肪、尿酸、塩分の過剰摂取、喫煙、過剰飲酒」に注意とのことだった。
 血圧は正常だ。糖尿も出ていない。コレステロール中性脂肪、尿酸も範囲内で治まっている。塩分の過剰摂取は、そもそもワシャは塩辛いものが嫌いなので大丈夫。煙草も止めて久しい。問題は過剰飲酒かなぁ。でも、一時のような暴飲はしなくなった。なるべく楽しい飲酒を心がけている。それでも飲酒の機会は普通の人と比べれば多いと思う。まぁ精神衛生上のストレス発散と思えばいいんですけどね(笑)。

サライ』12月号の特集が《能の見方と「風姿花伝」》。その中で思想家の内田樹さんが「能の本質」についてこんなことを言っておられる。重要なことなのでちょこっとメモっておこう。
《自分の生身を通して、そこに確かにある「日本人である自分自身の根っこ」を体感的に自得する。それが、能の本質に触れる、ということだと思います。》
《能の200番も、ひとつひとつは独立したドラマですが、全体として見た時に、「日本人とは何か」という巨大な問いが浮かび上がってきます。》 
《自分たちは何者なのか、この国はどんなふうに成り立っているのか。美意識ばかりではなく、自然観も死生観も広くは宇宙観まで「日本人のすべて」がここに集約されています。》
 ううむ、やはりお能を見続けてきたことは間違いなかったようだ。「なぜ能が好きなのか?」と問われたとき、「板に付いたものは能楽から蒲鉾まで好きだ」と答えていたものだが、実は「日本人とは何か」を知りたくて能楽堂に通っていたんですな。後付ですが(笑)。
 内田さんはこう締めくくっている。
能楽は学ぶ人を必ずや「日本の深み」に連れて行ってくれます。》
 よっしゃあ!ワシャも一生懸命に勉強するどー。学びを司る脳がとりあえず正常だったからね(嬉)。