つながる読書

 昨日、仕事帰りにいつもの本屋に寄る。注文しておいた本が届いたと連絡がはいったからね。その中の一冊は、ジョージ・アキタ/ブランドン・パーマー『「日本の朝鮮統治」を検証する1919−1945』(草思社)という本。
 実は、今、その本はワシャの眼の前に2冊並んでいる。1冊はもちろん昨日本屋から取ってきた新刊で、もう1冊は図書館で借りてきた本である。
 きっかけは月刊誌の『WiLL』11月号の書評だった。そこで紹介されていたのだ。「可能な限り客観的に、あらゆる資料を読み込んで日本の朝鮮統治を検証した」とある。この手の本には、やはり偏向の傾向が強く、読後に「やっぱりね」と思わされるものが多い。本の値段が2730円というのも購入を躊躇させた。1000円程度なら駄本でも許せますよ。でも3000円近い金額でつまらない本だと泣くに泣けない。だから近くの図書館で借りてきて、とりあえず読んでみたということである。
 主たる執筆者のジョージ・アキタは日系二世のアメリカ人で近代日本政治史の世界的泰斗、ブランドン・パーマーは朝鮮史で博士号を取得したきっすいのアメリカ人である。この二人がほぼ偏らず客観的に日本の朝鮮統治を分析している。これはヘイトスピーチで盛り上がっている若者たちもぜひ読むべき参考資料だと思った。と、すると、やはり手元に置いておくべき本だと判断したんですね。図書館本には付箋もべたべたと貼ってあるし……それで購入をしたというわけなのである。ワシャだって限られた予算の中で本を買っている。だから闇雲になんでもかんでも手当たり次第に……というわけではないのじゃ。

 その本を受け取りに行ったときに、書店の奥さんが一緒にPR誌も袋に入れてくれる。新潮社の『波』、角川書店の『本の旅人』、岩波書店の『図書』などである。これがけっこう役に立つ。本の紹介も多いし、連載の小説やエッセイなども楽しみにしているものがある。
 今月は『図書』がよかった。『図書』は岩波なので、内容がおおむね固い。小説は連載されていないしね。でも今回は、池澤夏樹さんの「酒と詩とアッラーの関係について」という文章がよい意味で引っ掛かった。
 ここで池澤さんは、友人の書棚にあったアブー・ヌワース『アラブ飲酒詩選』(岩波文庫)について触れている。池澤さんは正直に「この本について知らなかった」と言う。池澤さんでも知らない本があるんだ……と妙なところで感心してしまった。
 うふふ、でもね、ワシャはこの本を知っている。というか棚にちゃんと収まっている。大作家の池澤さんが「知らなかった」という本がワシャの家にあるのは、本貯めとしてはとてもうれしい。
 実は大した話でなくて、たまたま偶然、11月4日にブックオフ巡りに行ったおりに「岩波文庫もおもしろそうなのが何冊かあったのでまとめ買いをしておく」の中に『アラブ飲酒詩選』も混じっていただけのことだった。
 それでも、本と本がつながっていくのが楽しくて、また、本を予算以上に購入してしまうのである。ピーピー。