京都メモ(鱧しゃぶ騒動) その1

 夕方、京都在住の知人が合流した。彼女の知っている店が「京風創作料理」を食べさせてくれるというので、河原町三条の東の「浜町」という店に上がった。
 およよ、なんとこの場所は、幕末に新選組と勤皇の志士が死闘を繰り広げた「池田屋事件」のあった場所のすぐ裏手ではあ〜りませんか。いやいや広義に言えば、このあたりの路地まで会津藩兵や見廻り組が押し寄せており、池田屋からこぼれてくる志士を取り囲んでは膾のように切り刻んでいた。そういった意味から言えば戦場の真っ只中にいるという印象だな。
 時は流れ、平成の世になって、凡夫(もちろんワシャたちのこと)は同じ場所で浮かれ騒いでおります(恥)。

 いろいろな料理がちょこまかと出たけれど、酒をあおっているワシャは何を食したのかよく覚えておらぬ。印象に残っているのは最後に出てきた「鱧(はも)しゃぶ」だった。鍋が準備されその中で出し汁が沸騰している。そして大皿に河豚の薄づくりより少し厚めの鱧がきれいに並べられている。鄙から上洛した田舎者のワシャたちは「わ〜い」とばかりにその大皿に群がった。河豚刺しの如く箸で数枚の鱧を集めてそのままじゃぶじゃぶしていたら背後から一喝された。
「待たれい!」
(下に続く)