台風と環境

 書庫から見上げる小さな空が突き抜けるように青い。台風一過の清々しい朝である。暴風が夏の暑さを一気に蹴散らしたようで、西に開いた窓を開けると、かなりヒンヤリした外気が流れ込む。さっきシャワーを浴びたんだけれど、Tシャツ1枚では寒い。
 残念ながら今回の台風で多くの被害が出た。人命も失われたし、負傷者も多かった。土砂崩れや河川の氾濫もいたるところで起きた。台風の規模に比べて、被害は甚大だった。被災地対応は、国や自治体が早急に真剣に取り組まなければいけない。

 それはそれとして、このところの豪雨や暑い夏にさっそく反応した連中がいる。いわゆる環境屋のお歴々だ。平成19年に大ベストセラーとなった『不都合な真実』がまったくのでっち上げで、著者のアル・ゴア原発利権につながっていたというのは有名な話。3.11の原発事故以来、環境屋が静かになったなぁと思っていたのだが、またぞろ騒ぎ出した。今朝の朝日新聞の環境屋の意見を聴こう。
《「個々の異常気象の原因を、地球温暖化と結びつけることはできない」と科学者は言う。だが、温暖化が進めば、極端な気象現象が増えることは、科学が警告し続けてきた。》
 なんだか面倒くさい書きっぷりだなぁ。「異常気象」を「極端な気象現象」と言い換えているだけで、真反対のことを言っている。いったいどっちなんだ。
 環境屋アル・ゴアIPCC気候変動に関する政府間パネル)とつるんでツバル諸島の沈没も、シロクマくんの溺死も、巨大ハリケーンの増大も、みんな二酸化炭素のせいにしてたじゃない(笑)。
 でも、その後、ツバルは沈没しないし、シロクマくんの泳ぎが達者なのが判明してしまった。2004年以降、巨大ハリケーンは増大していないしね。

 環境屋は、台風18号が過ぎ去ったタイミングで、見開きの紙面を使って「朝日地球環境フォーラム2013」のキャンペーンを張ってきた。おそらくたまたまなのだろうが、主催者はうまく台風被害を利用できてよかったと思っているだろう。

 でもね、台風18号と地球温暖化になにか因果関係があるのかというとそんなもの誰にも解らない。気分としては、これだけの被害を見せられれば「なにか関係があるのでは?」と思ってしまうのが人情だろう。しかし、そのことを科学的に証明することはできない。
 例えば、昭和20年9月17日のことである。世にいう枕崎台風が西日本を襲った。死者・行方不明者4296人、浸水家屋は46万4000戸に及んだ。このころまだ全世界の二酸化炭素排出量は、現在の量に比べればまだまだ少なかった。でも、異常な台風は日本を襲ったし、枕崎台風を、極端な気象現象と呼ばずになにをもって極端と言うべきか。
 
 原発再稼働をめざす環境屋が復活しそうな気配がしますので、今後、もっともらしく出てくる環境情報には眉に唾をつけて向き合いましょうね。