CO2と放射能

 鳩山首相がまたとぼけたことを口にしている。
《やはり原子力は地球環境を守る、CO2を減らすためには欠くことのできないエネルギーだと、そのように理解しています》
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100306-00000539-san-pol
 日本は地震国である。ハイチやチリと同様に、いや、もっと危険な地震の巣の上に1億2千万人もの国民が犇きあって住んでいる。1986年のチェルノブイリ原発事故を忘れてはいけない。あの事故でどれほど広大な地域が放射能汚染されたか。広河隆一チェルノブイリ報告』(岩波新書)の「放射能汚染地図」によれば、原子力発電所から西に600キロ、北に400キロ、北東に1100キロの範囲に放射能がばら撒かれた。これをそのまま日本に当てはめるとすると、仮に御前崎美浜原子力発電所が爆発したとしよう。そうすると、西は山口県、北東方向は北海道旭川まで汚染区域となる。つまり国土のほとんどが汚染されてしまうのだ。こんなリスクを犯してでも、原子力発電にシフトしなければいけないのだろうか。そして爆発しなくても、原子力発電はおびただしい量の放射性廃棄物を生む。常に地面が揺れ続けている日本列島では保管そのものハイリスクといっていい。
 それに原子力発電も元となるウラニウムだって、そんなにあるわけじゃない。石油が残り40年、それに比べればあるにはあるが、それでも80年程度の発電しかできない。持続可能な世界を築くためには、100年ももたないようなエネルギーではどうしようもないのだ。
 そもそもCO2は有害物質なのか。地球温暖化の原因物質だとアル・ゴアは吠えたてるが、植物を育成するのはCO2である。ワシャらの身体だって、炭素でできているわけだし、冷害よりも温暖のほうがいいに決まっている。シロクマは地球規模で温暖だった縄文時代を生き抜いてきた。そういった事実には温暖化論者は一向に目を向けようとはしない。挙げ句の果てに安全なCO2を槍玉に上げて、極めて危険な放射性廃棄物を生み出す原子力を推奨するとは……。
 武田邦彦教授が、温暖化論者の枝広淳子氏、江守正多氏と激論を交わしている『温暖化論のホンネ「脅威論」と「懐疑論」を超えて』(技術評論社)が面白い。枝広さんというのは、アル・ゴアの『不都合な真実』を訳された方なのだが、この人の発言はほとんど宗教家のそれだった。武田さんにおもいきり突っ込まれて、合理的な説明ができなかった。これがCO2脅威論の正体といっていいだろう。
 こんないい加減な言説に惑わされて、原発導入をしようとは、正気の沙汰ではない。