施政方針演説

 安倍首相の施政方針演説を朝日新聞で読んだ。
 4ヶ月前に、当時の野田首相が第181国会において述べた所信と比べると具体的でわかりやすい。
 冒頭の「はじめに」でも、野田さんの言葉はゆるい。
「切迫した使命感をもっている」
「立ち止まっている時間はない」
「すべての人が元気を取り戻してほしい」
「安心できるエネルギー・環境政策を確立したい」
「今を生きる世代として責任を果たしたい」
「責任を果たすために仕事を投げ出すわけにはいかない」
「政策に停滞をもたらすようなことがあってはならない」
「明日への責任を果たすため力強く踏み出そう」
 内容は具体性に欠ける言葉の羅列のような印象を受ける。原稿用紙3枚程度の文章の中に、「明日」が9回も出てくる。「将来」「未来」なども含めれば、この手の言葉が17回を数える。先のことばかりで、今、ここにある課題にフォーカスが合っていない。
 それに比べ、安倍首相の「はじめに」は、原稿用紙1枚程度にも関わらず、強いメッセージが込められていると感じた。
「脱亜論」の福沢諭吉の「一身独立して一国独立する」という言葉を引いて「国民は誰かによりかかる甘えを捨てろ」「自らの運命を切り開こうという意志を持て」と言っている。その上で「この意志を固めなければ未来は開けない」と断言する。
言っていることが具体的である。そして締めくくりはさらに踏み込んでこう言う。
《「共助」や「公助」の精神は、単に可哀想な人を救うことではありません。懸命に生きる人同士が、苦楽を共にする仲間だからこそ、何かあれば助け合う。そのような精神であると考えます。》
「共助」や「公助」を食い物にしている連中がいる。そして食い物にはしていないけれど、自立を避け、ぶら下がっている怠惰な国民も少なくない。それらに対して安倍首相は「立て!」と叱責しているのである。

 ワシャは、カンナ音という男に対しては批判的だった。しかし、その後を継いだ野田さんに対しては口を極めて罵るようなことはしてこなかった。安倍さんに関してもそれほど強いシンパシーを持っているわけではない。だから、両者の施政方針演説を客観的に読んでいると思っている。冷静に読み込んで、安倍首相に軍配を挙げるものだが、その点、朝日新聞の論調は安倍首相に対してすこぶる批判的である。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130301-00000006-asahi-pol
 安倍首相が40分の演説の中で、「世界一」を7回言ったと揶揄しているが、朝日の好きな野田さんは、4分間の間に「明日」を9回も言ったのだ。それはいいのかい(笑)。