日曜美術館

 昨日、再放送があった「日曜美術館」がおもしろかった。
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2013/0217/index.html
「天下人と天才たちの器 〜茶道具 超名品!驚きの美〜」と題して安土桃山の茶道具の紹介を、中島誠之助の案内でまとめてある。
 目から鱗だったのは、秀吉の黄金の茶室だった。成金趣味の茶室、わびさびから最も遠いところにある茶室、そう思っていた。
 ところが違うらしい。そもそも秀吉の黄金の茶室は組立式で、御所の奥の院で帝を茶室に招きたい、そういった思惑で造られていた。
 二条城とか行ったことがありますか。ああいった大きな建物になると高貴な方の生活空間というのはかなり暗いですよね。そこに茶室を組み立てるのである。茶室の中は、昼なお暗い空間になる、ということは容易に想像がつく。
 そこで茶の湯をするためには、灯が必要となる。暗い室内で灯明を点す。そうするとね、あの黄金の茶室が成金趣味からガラッと変わって幽玄の世界になる。語彙を増やすために幽邃(ゆうすい)と言い換えてもいい(笑)。光があふれる空間では、あの茶室は趣味が悪いが、暗い室内においた時、奥行きのある、わびさびのともなった深い空間に変貌するのである。このセンスは、秀吉がただならぬ美的感覚を持っていた証左に他ならない。
ワシャはテレビの画面でしか確認していないけれども、確かに黄金の茶室は、闇の中で幽邃な空間として成立していた、そう言っていいと思う。
秀吉と千利休の対立が史実としてある。しかし、私たちはいつも千利休に芸術性ということでは軍配を挙げてきた。利休の芸術性に嫉妬した秀吉が利休を誅した、それが定説と言っていい。しかし、ちょいと違うのではないか。秀吉は、あるいは千利休を凌駕する芸術性を持っていた人物なのかもしれない、利休は己を超えた権力者秀吉に心底負けたのである。だから腹を切った。そう思わせる番組であった。

 その他にも、古伊賀水差「破袋」、唐物肩衝茶入「初花」についての薀蓄もありぃの、なかなか茶道具好き、歴史好きにはけっこうはまる番組ではあった。
 深夜、NHKでアニメの「へうげもの」を放映していた。「へうげもの」の主人公は古田織部である。古田と言えば、利休の直弟子であり、奇抜なデザインではその右に出るものはあるまい。
 でもね、秀吉のスケールの大きさを実感すると、利休や織部は、しょせん、茶道の職人でしかなかったような気がする。