首相所信表明演説の天声人語

 安倍首相の所信表明演説をくさしている天声人語を解読してみたい。
(《》の中は天声人語
 最初のフレーズである。
《失意の時を経て、ひと回り大きくなる人もいるし、芸や信念に磨きがかかることもあろう。何によらず復活の舞台は感動的だ。その点、安倍首相の所信表明演説は思いのほか薄味だった。》
「何によらず復活の舞台は感動的だ」と言うが、そんなことはない。酒井法子の復活の舞台がまったく感動を呼ばなかったことは記憶に新しい。世間の狭い天声人語氏が独断で決めつけるのはいかがなものか。
「その点、安倍首相の所信表明演説は思いのほか薄味だった」
 およよ、「思いのほか」と言うからには多少は期待していたということなのかにゃ、ニャーニャー。端から期待していないくせに、適当なことを言っているんじゃないよ。

 2番目のフレーズは悪意が鼻につく。
《理念より実務か、特段の高揚はない。わずかに、時代がかった言辞が目立つ程度だ。「病のために職を辞し、大きな政治的挫折を経験した人間」が、「国家国民のために再び我が身を捧げんとする決意の源は、深き憂国の念にあります」と。》
 高揚があろうがなかろうが、空疎な理念を並べるよりも実務的で結構ではないか。牛の小便でもあるまいにだらだらと垂れ流すだけの演説よりも、簡潔で解りやすかった。
「時代がかった言辞が目立つ」と言うが、どこなのだろう。例として「深き憂国の念」を挙げているが、5000字の演説文の中でそこだけである。まさか「三本の矢」とか、東日本大震災に触れて「犠牲者の御霊に報いる道」と言ったところまで含んでいるのかなぁ。その全部を入れ込んだとしても、わずか80文字。上記の3つが該当していたとしても5000分の80では「目立つ」と特筆するほどの文量ではない。
 むしろ天声人語氏は、安倍首相が「古い時代に回帰しようとしている」と言いたいのである。もっと踏み込んで「戦前に先祖がえりしようとしている」と喧伝したいのだ。だから目立ってもいない「時代がかった言辞」をわざわざ強調してものを言っている。

《20分弱の短さ、ヤジはなく、時おり拍手が起きる。衆院は3分の2以上が与党席だから、どこか党大会のよう。下野した民主党の消沈に思う。チェック能力は大丈夫か。》
「20分弱の短さ」は、もちろん冒頭の「薄味」に掛かっている。要するに中身のないスカスカな演説だ、と言いたいわけね。その後ろはどうでもいい。もともと民主党にチェック機能などないのだから。
《政権の色をより端的に語るのは、大枠が固まった予算案だろう。防衛費を11年ぶりに上積みし、自衛官も8年ぶりに増員する。尖閣の海空で続く中国の挑発への、これぞ「憂国の念」である。》
 まず、このフレーズがワシャにはよく読解できない。最初の一文は、「予算案に政権の色が出る」と書く。それは当たり前だ。次の文は、防衛費が伸びたことを指摘する。その上で、安倍首相が演説冒頭で、
「国家国民のためにふたたび我が身を捧げんとする私の決意の源は、深き憂国の念であります」
 と、言ったところに引っかけ、「安倍さんの憂国の念とは中国と尖閣でことを構えることである」と決めつけている。
 そうは言っても、防衛省の予算は400億円上昇しただけである。率にして0.84%である。年収が475万円の人なら4万円の上積み、月に換算すれば3,300円の昇給である。ここ8年ばかりずっと減らされてきた防衛費を考えれば、微々たるものと言っていい。朝日新聞はケチをつけるばかりではなく、真剣に日本を憂いてみせろよ。おまえら朝鮮半島支那を憂いているばっかりではないか。

《頑張る人は報われる。この基本が揺らぐことへの「憂国」も大きいらしい。生活保護の支給額が、働く貧困層の消費支出より多いといった矛盾だ。勢い余って過去の物価下落分まで削る結果、特に子育て中の保護世帯には痛い減額となる。自助を促すというには、手荒すぎないか。》
 ここで天声人語氏が主張したいのは、「生活保護に厳しすぎる」ということである。しかし、「資産家」と呼ばれる人以外は、みんな収入が減っている状況で、生活保護だけが右肩上がりというのもおかしいだろう。それこそ安倍首相の言われる、
「額に汗して働けば必ず報われ、未来に夢と希望を抱くことができる、真っ当な社会を築いていこうではありませんか」
である。
 貧しくても、生活保護を受けずに頑張っている人がいる。その人は生活保護より少ない金額でも「額に汗したお金」で生きている。その「大切なお金」で子育てをしている方もみえるだろう。最後のセーフティネットとしての生活保護は必要である。しかし、働けるものが施しをうけることに馴れてしまってはいけない。汗を流すことを放棄してはならない。ならぬことはならぬのです。

憂国首相にとって通常国会は、ご本人言うところの「過去の反省」を試す場となる。ここまでは経済対策を軸に安全運転で、株価も支持率も高い。夏の参院選までは世論をにらみ、車線の真ん中を行くつもりと思われる。さて、右端で待つ支持層がどこまで辛抱できるか。》
 嫌味だねぇ。じゃあ朝日新聞は左端でずっと待っていろ。それとも海を渡るかい(笑)。