贈り物二題

 今朝の朝日新聞社会面、「贖罪の陰 凶行明るみ」という見出しが躍った。平成19年8月、名古屋市千種区の路上で、仕事帰りの磯谷利恵さんが拉致・殺害された。その事件で無期懲役を言い渡されている犯人の堀慶末が、別件の殺人事件で逮捕された。5年目の夏のことである。
 利恵さんの母親の富美子さんは、ずっと堀慶末の死刑を求めてきた。最高裁まで闘ったのだが、望みはかなわず無期懲役が確定している。結論はでた。だから、富美子さんは、口惜しいけれども、ずっと続けてきた極刑を求める署名活動を、この夏の命日をもってやめることを決めていた。
 その母の肩にそっと手が添えられた。利恵さんの手である。
「お母さん、もう大丈夫よ。私がお母さんに代わって、堀の悪事を裁くわ」
 事件から5年目のこのタイミングで、堀慶末の過去の悪事が白日の下に晒されることになった。1998年に碧南市で2人を殺害している。これで死刑になりゃなきゃ、ワシャらは枕を高くして寝られまへんで。天網恢恢疎にして漏らさず、きっと天に召された利恵さんが、ほんの少しだけ手を貸してくれたんだと思う。

 昨日、帰宅すると自宅の玄関の隅に大きな紙袋が置いてあった。時限爆弾かな?と思い慎重に中を見れば、夏野菜が満載。キュウリ、トマト、ナス、オクラが山ほど入っている。はてな、誰が置いていったのだろう。家庭菜園を楽しんでいる友人の顔を思いだすのだが、ピンとくる人がいない。
 夕方、歌舞伎仲間からメールが入る。「こんにちは。オクラがようやく収穫できました。玄関に置いておきましたのでご賞味ください」
 ああ、腑に落ちた。歌舞伎に行った時に、野菜の話になって、ワシャが「オクラが好物だ」と言うと、仲間が、「オクラは山ほどできる。できたら上げますね」と言ってくれたのだった。
 それが届いたのだ。う〜ん、キュウリは曲がっているが太い。トマトもけっして美人じゃないが、はちきれそうにプリプリしている。ナスもでかい。オクラにいたっては一夏食えそうなくらいの量がある。スーパーに並んでいる野菜に比べると、見た目は良くないけれど、夏の陽だまりの匂いがたっぷりとしますぞ。
 さっそく夏野菜の天ぷらをしたのだった。