今週末から、名古屋御園座で「二月花形歌舞伎」が始まる。例年、十月と四月というのが御園座の歌舞伎だったのだが、ここ二年ほど十月と二月になってしまった。出演者も、ぱっとしないなぁ。弁天小僧の菊之助はいい。南郷力丸が舌足らずの松緑までは許せる。その他がいけない。日本駄右衛門が團蔵で、忠信利平が亀三郎、赤星十三郎が梅枝?御園座は全国公立文化施設協会に格下げになったのか(笑)。
ま、その分、チケットが安いから仕方ないけれど、もう少し、御園座の対松竹交渉人はがんばれよ。なんならワシャが替わりまっせ。
そんなことはどうでもいい。もうワシャの気持ちは御園座の舞台に翔んでいる。今回の夜の出し物は「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」の通し狂言だ。いわゆる白波五人男である。少し物語に触れたい。
時代は、鎌倉時代、執権が北条時頼の頃のお話である。元寇で活躍をする時宗の父親が時頼と言ったら解かりやすいだろう。その頃のお話なのだが、景色やこしらえはみんな江戸風というのが歌舞伎なんですね。
さて、まずは題名の解説をしよう。「青砥」というのは苗字である。大詰で日本駄右衛門をお縄にするお奉行様が「青砥藤綱(あおとふじつな)」という人である。「青砥の書いた豪華絢爛桜満開の読物」とでも訳しましょうか。
第一幕は、鎌倉は長谷寺である。石段に朱塗りの高欄、正面に回廊、上手に出茶屋。ここでこの物語の説明がなされるわけだ。なにしろ物語が、あっちへ飛びこっちへ跳ね、登場人物の関わりが切れたり付いたり。この狂言をご覧になる方はしっかりと状況を頭に入れておかないとなにがなんだか解らなくなりますぞ。
物語は、北条時頼を亡ぼそうと企む三浦党。その一派がいろいろなところで画策をして、時頼派を排除しようとしている。
時頼派の小山判官の娘である千寿は、亡父と謀反人の汚名を着せられて死んだと噂される許嫁の信田小太郎の追善にために、鎌倉の長谷寺に参詣している。
盗賊の弁天小僧はその小太郎になりすまし、姫と契りを結び、小太郎の結納の品である「胡蝶の香合」を巻き上げる。
信田の遺臣である赤星十三郎が伯父に会う。伯父の主家も三浦党の企みで取り潰され、その主家の病気の後室を抱えて困っている。そのやつれた伯父の姿を見るに見かねて、千寿が仏前に供えた回向料を盗むが、小山の家臣に捕えられて、伯父からは勘当される。なんのこっちゃという話ですな。
最終的に回向料は日本駄右衛門の子分の忠信利平が横取りするのだが、またその金を狙って南郷力丸と大立ち回り。ここらでチョーンと柝がはいり第一幕は終了となる。
いろんな登場人物が現われ引っ込み、いろいろなしがらみを見せて語っていく。まさに色とりどりの絵を見せてくれるのである。