初春や いろんなことが 気にかかる

 夕べ、新年会が二つあった。一つ目は、午後5時から始まった。そこをおもいきり盛り上げておいて、1時間半ほどで失礼する。
 寒風の中、二つ目に向かう。
 二つ目は、地元のツレの家だった。遅ればせなので、芋焼酎の「天孫降臨」と、つまみに「鮭とばロング」とホルモンの煮込み「とんちゃん」を持参する。
 すでに、ツレたちは2時間ほど飲んでいるので、場はすっかり酔いが回っていた。飲みつかれて静かだ。そんなこっちゃ駄目じゃないっスか。
「よっしゃー、元気を出すぞー!」
 と、新たなビールを開けて、気合を入れなおすのだった。

 まぁいろいろ話しました。経済のことや、子供のこと、孫のこと……なぬっ、孫!ツレにはもう孫がいるのだ。そして写メを見せながら「かわいいんだわ」と相好を崩す。
 確かに、そろそろそういう年齢ではある。ワシャの師匠も、見た目はメチャメチャ若いし、パワフルに世界を飛び回っているが、ワシャと同い年ながらすでにお爺ちゃんになっている。そういう時代に差し掛かっているということなのだろうか。
 ツレが言う。
「早く、孫と一緒に酒が飲みたい」
 おまえはジジイか。あ、ジジイだ。でも、そんなこと言ってくれるな。こっちまで老けてきちゃうじゃないか。まだ若いのだから、「きれいなねーチャンと飲みたい」とか言ってくれ〜。

 もう一人のツレも2年ほどの出張からもどってきて、アクが抜けてしまったようだ。出世を目指していたころには、勢いのいい発言が聞かれたものだが、そのラインから外れてしまったのか、穏やかな普通の会社員になっていた。まあ、それでいいんだけどね。
 そいつが、ジャージを着ていた。レアもののジャージとのことで自慢をしていたが、襟が全体にほころんでいて、袖のラインも黄ばんでいる。はっきり言ってボロい。
「新年のあいさつで他家を訪問する格好ではなかろう」
 と、指摘すると、「値段はべらぼうに高いのだ」と言ってはいたが、
「TPOというものがあるだろう」
 と、言うと、もともとお洒落な男なので、その後は反論をしなかった。

 今、自宅の隣接地で、建設工事をやっている。昨年の春先からトンテンカンとやっているので、まもなく1年になるのか。それほど大きな建物ではないのだが、施主の若造の友人らしい大工が一人っきりでやっているので、まったく埒が明かない。この間も、深夜まで作業の音を出していたので、叱っておいた。叱るとね、素直にわびて、静かになるんですな。
また、建築中の建物の中で時々、施主と、その家族、その友人たちで大宴会をする。周辺は、高齢化のすすむ古い住宅地なので、夜ともなると、その音がけっこう周辺に響きわたるのだ。
 ワシャの家のはす向かいの独居の老婦人が、そのうるささに困り果てて、相談にきたので、また、大声で怒鳴っておいた。そうすると静かになる。
 そして、今日である。まだ正月の三が日に、工事を始めやぁがった。いくらなんでも、正月くらい静かにしろよ。常識がないというか……。

 知人の塾講師からさっき聞いた話。
 年末年始と休みが続くので、宿題を12月最後の教室日に多めにわたして、年末年始の過ごし方や、正月の塾のスケジュールを詳細に書いた通知文を渡したのだそうな。
 元旦の夜に、ある生徒の母親からメールがはいった。
「こんばんは、年末年始、教室がやっていないので宿題がありません。明日、教室が開いていれば、宿題を取りにいきます。」
 知人は言う。
「正月の2日に、なんで教室を開かなきゃいけないんだ。それに、宿題は年末に渡してあるし、塾の教室日のスケジュールも通知してある。この親はまったくその通知文を読んでいないんだ」
 こまったものですな。
「それに、元旦の夜にメールを出すのに、『こんばんは』はねえだろう。『明けましておめでとう』だろうが」
 仰るとおりです。なんだか、日本の伝統的なしきたりや年中行事などが軽視されているような気がする。
 正月の2日から、書庫の整理を再開したワシャも人のことは言えない。でも、少なくとも見えないところでやっている。
外に対しては、国旗を掲げ、門松、しめ飾り、鏡餅をしつらえて、静かに新年を寿いでいる。
 社会がどうも正月を単なる長期休暇としか認識していないような風潮だ。外資系のスーパーは元日からやっているし、パチンコ屋の駐車場も2日から満車になっている。こんなkとでいいのだろうか。新年早々、また新たな課題を拾ってしまったような、そんな気がしている。