飲み会でのエピソード

 皆さんがご承知のように、ワシャは仕事柄、宴席が多い。ワシャの地域には料亭が何軒かあり、芸妓文化も根付いていることから、会席での宴となる。銘々の膳に、それぞれ料理が運ばれてくるという形式だ。
 宴が盛り上がってくると、入り乱れての酒盛りになる。要領のいいやつは、料理なんかはそっちのけで席を立って、上司のところにはせ参じる。ご苦労様。
 ワシャはよっぽど自席で飲んでいるが、気心のしれたツレがいたりすると、そこへいってウダウダ言いながら飲む。
 その時は、ツレの膳を挟んで酒を酌んでいた。ツレが手洗いに立つ。一人で飲んでいると、ツレの膳に海老の天ぷらが残っているではあ〜りませんか。実は、ワシャは海老天に目がない。大好物である……。

 ツレが手洗いから帰ってきた。
ワシャ「長かったな?」
ツレ「ああ、トイレの入り口で△△部長につかまった」
ワシャ「△△さんの話は終わらないからな」
ツレ「そうそう」
ワシャ「まあ一杯飲め」
ツレ「あれ?」
ワシャ「どうした」
ツレ「オレの海老天がない」
ワシャ「それはワシャが食った」
ツレ「食ったって……オレは海老天が好きなんだぞ」
ワシャ「ワシャも好きだ」
ツレ「一言、あいさつしてから食えよ」
ワシャ「あいさつはした」
ツレ「ウソをつくな」
ワシャ「ウソではない。食べる前に、海老天さんに『こんにちは』とあいさつしてから食った」
 その答えを聞いて、友人はそれ以上の追及を止めたのだった。海老天さんにあいさつしておいてよかった。