落語の「黄金餅(こがねもち)」を知っていますか

 江戸の貧乏長屋の話。
 物乞い坊主が死にかけている。この坊主が金の亡者で、食うものも食わず、貯めに貯めた一分金を、この世に残していくのが惜しくて惜しくて、死ぬに死ねない。それじゃぁってんで、餅に包んでみんな腹の中に収めちまおう、あの世に持って逝こうと考える。黄金の入った餅を全部呑みこんで、安心したのか、これで坊主は往生する。
 それを隣の長屋に住む金兵衛が、壁に開いた穴から覗いていた。
「よし、あの金を横取りしてやろう」
 と、その坊主の亡骸を担いで火屋(火葬場)に持ち込んですっかり焼いちまう。そこで坊主の腹の中の黄金を全部せしめ、その金を元手に「黄金餅」という餅屋を始めて、大いに繁盛したんだとさ、という話である。
 この「黄金餅」を得意にしていたのが、立川談志である。焼き上がった骨の中から一分金を拾い集めるところの芸は大したもんだったね。鬼気迫るっていうか、リアリズムの権化というか。

 今週号の「週刊現代」の特集《「なんでも暴力団島田紳助と、そのお仲間たち》がおもしろい。
《紳助さんには『お笑いを極めたい』なんて気持ちはありません。あるのは、『有名になって金持ちになりたい』という野心でした。そのために、自分ができることは何かは、とことん研修していたと思う》
《裏ではグレーな人々に教えを請い、自分だけ儲けようと画策している。》
《紳助さんは反応の早さ、切り返しの早さというものはありました。おそらくIQが高いのでしょう。しかし、私に言わせれば、いかんせん教養がありません。いかがわしい方々とお付き合いがあるとのことですが、テレビというものの恐ろしさで、カメラを通すと必ず人品骨柄が表れてくるものなんです》
 37年間、芸能界で黄金をため、その黄金を裏社会のルートで投資して、小金を大金に替えてきた紳助。その腹の中に呑みこむだけ呑みこんだ金が入っているのだろう。そして、呑みこみ過ぎてにっちもさっちもいかなくなって倒れた。壁の穴からは、お仲間たちが、倒れた紳助を火葬場に担ぎ込もうと虎視眈々と狙っている。

週刊現代」の記事を読んでいて、落語「黄金餅」を思い出した次第である。