侘助や座右に猿蓑炭俵

 週末に時間が空くと、あちこちのブックオフをめぐる。数軒回って100冊ほど購入するときもある。こういうおかしな買い方をしているワシャを見て、ブックオフのネーチャンは、「このオッサン、古本屋?」と思っているんだろうなぁ。
 100冊というと大変な量のように思うかもしれないが、1冊105円だから、一万円ほどの出費で済む。同じ時間、パチンコをやっていればもっと掛かるだろうから、まぁ道楽としては善き哉、善き哉。

 買ってきた本は、取りあえずその日のうちに目を通す。もちろん読破などできないから、目次を見て気になるところをパラパラと繰る程度である。でもね、それだけで結構、必要な個所が見えてくる。
 確認が済んだら、それぞれの分野ごとに分けて、書庫(物置ともいう)に積んでおく。積んでおくといずれ醸成され、読み時がやってくるというわけ。
 さて先週買ってきた本である。は大雑把に、仏教、キリスト教、歌舞伎、落語、俳句、政治、環境、防災、戦記、ハウツーものなど10分野に分けられた。
 俳句本のかたまりの中に、佐川広治『季語の花』(TBSブリタニカ)の春夏秋冬がある。定価1,900円が105円で売っているのだからたまらない。花の写真集のような体裁なので眺めているだけでも楽しいですぞ。早速、風呂に持ち込んで、湯船に浸かりながら読む。そこで出てきたのがタイトルの「侘助や座右に猿蓑炭俵」だった。
 これは、虚子の弟子の村松紅花という俳人の句である。紅花は国文学者でもあり、芭蕉に造詣が深い。だから芭蕉の句作「猿蓑」「炭俵」を十七文字の中に読み込んだのである。

 紅花の書斎は和室だ。机は南に向いている。そこで紅花は「猿蓑」や「炭俵」を書見していたのかもしれない。疲れてふと辺りを見回せば、侘助が一輪、床の間に挿してある。

 風呂に入っていて、あることに思い至った。「もしかしたら……」そう思ったら、のんびりと風呂に入っている場合ではない。あわてて風呂を飛び出すと、書庫に走り『コンサイス日本人名事典』を調べた。
 確か、芭蕉が「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」の辞世の句を残して没したのが、10月だったと記憶している。もしかしたら今日(夕べ)だったかも。
(調べ中…調べ中…)
 あった!ああ、芭蕉は10月12日に身罷っている。今日(夕べ)は、10月13日、う〜む、そうドンピシャとうまくは嵌らないわさ。
 あわてて風呂に引っ返しましたぞ。ヘーックショイ!