奇跡は起こる

 書庫から古い新聞を引っ張り出してきた。2004年10月28日の朝日新聞である。1面には「2歳男児、4日ぶり救出」と大きな見出しがかかる。あの中越の奇跡と言われた救出劇のニュースである。少し記事を引く。
新潟県中越地震の発生から5日目の27日午後2時ごろ、同県長岡市妙見町の土砂崩れ現場で、行方不明になっていた母子3人が乗っていたワゴン車と岩の間から長男が見つかり、無事に救出された。》
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201201230710.html
 2004年10月の新潟県中越地震で、崩れた土砂の中から93時間ぶりに奇跡的に救出された当時2歳の皆川優太くんが元気にすくすくと育っている。さぞや、天国のお母さんも安堵していることだろう。
 通常、生き埋めになると72時間が限界といわれいる。残念ながら優太くんのお母さんとお姉さんは亡くなった。しかし、優太くんは土砂の中でワゴン車と土砂の間のわずかな隙間で健気に生きていた。余震が何度も襲っている状態である。救出の3時間前には震度6弱地震が起きた。2歳の子が生きていたのは奇跡としか言いようがない。どう考えても、土砂の中で、亡くなられたお母さんの魂が、優太くんを優しく抱きしめ、励ましていてくれたような気がしてならない。
 いけない、泣けてきた。

 そして、再び、奇跡が起こった。北海道湧別町の奇跡だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130303-00000053-mai-soci
 愛娘を守るためにお父さんが命を賭けた。いくら父親が命を賭けたって最悪のブリザードが敵である。勝てる相手ではない。白い死神は父娘ともども命を凍らせるべく、農業倉庫脇に白い闇をつくって二人を足止めした。その攻撃は猛烈だったに違いない。しかし、お父さんは負けなかった。白い死神から愛娘の命を守りきった。お父さんは、遠のく意識の中で、しかし、愛娘のぬくもりをしっかりと感じていたのだろう。お父さんには「この娘は絶対に助かる」と確信していたに違いない。自身の背をさいなむ死神に対し、鉄壁の命のバリアを張っているのだ。
 お嬢さんは、生涯、父親のぬくもりを忘れないだろう。それは、お父さんからのとても大きな贈り物である。
 
 こういった話をきくと、神様って、実はいるんじゃないかと思うのだった。