愚者の行動にはつねに無駄がつきまとう その3

(上から続く)
 今回の大震災は大変な災害だった。被災地の子供たちの苦労については被災地外の我々の想像をはるかに超えたもので、被災した子供たちは希望を見失っているのかもしれない。
 でもね、全国の小学生に呼びかけているのだとすれば、「希望を失っている」と十把一絡げにすることは乱暴すぎる。全国には、東北地方の大惨事に思いを馳せながらも、新学期に希望を持っている子供もいるはずだ。全国の小学生が一様に希望を見失っているのかと言えばそうでもない。
 ならば、ここの「みなさん」は被災地の小学生を指しているのかなぁ。2つ目に出てくる「みなさん」は明らかに被災地の小学生のことなのだけれど……。
「みなさん」と呼びかける対象が変化しているなら、きっちりとそのところを書いておかなければ読者は混乱をきたすんですけど。
 この後に続くフレーズでようやく「みなさん」が被災地の小学生を指していることがはっきりと解る。ずいぶん時間がかかったのう。
《避難所の中では、みなさんがお手伝いをしたり、お年寄りや身体の不自由な人を助けて、掃除をしたり、食事の準備をしたりしてくれているという話をたくさん聞きました。本当にありがとう。
 いま、みなさんは、すべての悲しみや不安から逃れることはできないかもしれません。
 でも、みなさんは、けっして一人ではありません。どうか、先生やお友達と助け合って、一日も早く、みんなが楽しく安心して学び、遊べる学校を取り戻しましょう。私たちも全力で、みなさんと一緒にがんばります。》
 ここで段落が変わって、
《災害にあわなかった地域の児童のみなさんにも、お願いがあります。》
 こう呼びかけている。この文章でようやく誰に言っているのかが明確になる。とするなら、その前の「みなさん」はすべて被災地の小学生に言っていたのだろうか?
 それに、今まで「みなさん」を「小学生のみなさん」という意味で使ってきたのに、ここで敢えて「児童」をつける意味が見えない。
「災害にあわなかった地域のみなさんにも……」とすればいいのにね。

 突っ込みどころ満載なのでちっとも進んでいかない。5行ほど飛ばす。
《小さなみなさんも、節電をしたり、おこづかいを貯めて募金をしたりしてくれているという話もたくさん聞きました。》
 今度は「小さなみなさん」ときたか。後の文章をみると、これも「小学生のみなさん」のことだろうと推察はつく。しかし、何に比較して「小さな」といっているのかを示さないとよく解らない。
(下に続く)