木柾はたまらぬ その2

(上から続く)
 そうすると背後から80歳になる老母が耳を押さえる手を突くのである。
「へんな格好をするんじゃない」
 と、いうことらしいが、キンキンと脳に直接響くんですぞ。脳が疲れているんですぞ。だから、耳をふさがないと吐き気がしてくる。血圧も上がってくる。だれに何と言われようと、耳を押さえている手は外すものか。
 そうするとまた母親が後ろからワシャの脇腹をツンツンと突いてくる。外さないとどんどん攻撃がエスカレートしてくる。でも、外せばキンキン、押さえればツンツン、キンキンツンツンキンキンツンツンで地獄のような法要だった。
 法華坊主も調子にのりおって、延々、1時間も読経をあげおって、だいたいお経などというものはありがた〜いところを短めにするもんだ。木柾の甲高い音も耳障りだし、読経も牛の小便みたいだし、ワシャは日蓮門徒にはなれないと思ったのだった。
(下にもあります)