心を失なわないぞ

 やたらと忙しい。
 ワシャのスケジュールは社内の誰でも見ることができ、押さえることも可能である。だから、協議や会議の予定がどんどんと入ってくる。少しでも隙間が空いていると、どこかの部署がいつの間にか打ち合わせを入れてしまう。一日中、会議室から会議室に渡り歩き、席に戻る暇がない。たまに戻れば稟議書が机上に山のように積まれ、あちこちから入る電話のメモが何枚もパソコンに貼られていたりする。
 夜は夜で関係者との会合や宴席があって、そっちも梯子をしなくてはならない。
 その上に、本日の夜、イベントを一つぶち上げるので、その準備も忙しかった。一昨日の夜とその前の夜は、イベントで使う髭(ひげ)と鬘(かつら)を作るために一晩中ニットの帽子に黒の毛糸を編みこんでいた。たった一人、リビングでこんな作業をしててごらんなさいよ。「♪かーさんがよなべをして てぶくーろあんでくれた〜♪」と歌が出てくるから。
 気がつけば夜明け近くになっていた。

 こんな調子だから、どうしても読書の時間が制約される。
 昨日は名古屋へ出張だったので、電車の中で貴重な読書時間を確保した。しかし、20分では新書は読み切れない。ううう……思い切り読書がしたいが、時間がない。世に中には暇を持て余している人が数多存在する。なんでそんなにすることがないのだろう。不思議でしょうがない。ワシャなんてやることばっかりが次から次へとあらわれて、うれしい悲鳴を上げている。(実はあんまりうれしくもないが…)
 でも、このところの走りすぎがたたって腰のほうが悲鳴を上げ始めている。こっちは気を付けないと動けなくなってしまう。てなことでメンテナンスを施しつつ、今日も走り続けるのだった。少しスピードは抑えますけどね。