荘子への送辞 その2

(上から続く)
 儵と忽が、このスライムのお化けのような渾沌に手厚くもてなしてもらった。お礼に何かお返しをしなければということで「そうだ渾沌には目も鼻も口も耳ない。俺たちでその穴を穿ってやろう」ということになった。
 二人は1日に1穴ずつ穿ち、7日目には渾沌に目穴×2+鼻穴×2+耳穴×2+口穴の計7穴を穿った。しかし、7穴目を開けた7日目に渾沌は死んだ。
 これだけの話である。人為を加えない自然のもの、あるいは未分化の状態のものに、人為的な手を入れると、そのものを壊してしまうということなんだね。
 呉先生の話を聴きながら、塾の劣等生のワシャは別のことを考えていた。
「儵と忽は、まず口から穿ったんだな。口を穿てばものを食うことができる。食欲をしってしまった渾沌は食いに食ったに違いない。7日の間、ものを食べ続けたが、儵と忽は8つ目の穴である肛門を開けなかった。排泄をしなければ死ぬ。これで渾沌は死んだんだ」
 儵と忽は、まず口を開けて、2日目に肛門を開けるべきだった。それから目や耳を開ければ、日日きちんと栄養の摂取と排泄を繰り返し、渾沌はすくすくと育っていったに違いない。
 塾がしめられ、その後、大津通りの「南風」で打ち上げになった。この店は名言塾の劣等生4人組が塾帰りによくしけこむ沖縄料理店である。その店の狭い2階に、なんと、24人もの塾生が詰めかけて大騒ぎだった。あー面白かった。
 宴が終わって、呉先生にお礼の言葉を述べ、塾生らはそれぞれ帰路につく。大津通りを塾生数人と歩きながら名言塾のことを話し合った。塾生の共通認識としては「また、呉先生の講義をうけたいね」というものだった。
 せっかく呉さんのような知識人が名古屋にいるのである。ワシャのようなアホはともかくも、きっと多くの若者が呉さんの薫陶を受けて次の世代を築いていってくれるに違いない。是非、企画してくださいね。セコ道さん。