久々の読書会は苦かった

 久々の地元の読書会。課題図書は、日垣隆『少年リンチ殺人――ムカついたから、やっただけ《増補改訂版》』(新潮文庫)である。これは海千山千の地元の読書会メンバーにもヘビーだったらしい。
 メンバーは口をそろえて「一気に読んでしまった」と言った。確かに日垣さんの筆は、のっけから読者の心を鷲づかみにして、そのまま最終章の「救い」まで読ませてしまう。日垣さんの持つ筆力のなせる技と言ってしまえばそれまでなのだが、徹底した取材による真実の探求がこれほど心を揺さぶるものなのかとあらためて感じた。
 それにしても加害者、加害者の家族の、この卑劣さはなんなんだろう。この無責任さはなんなんだろう。とくに主犯格の父親が卑怯だ。松本少年刑務所の看取部長をしているこの男は、自らの保身のためだけに、弁護士に手を回して息子の仲間をはめている。この父親に対しての日垣さんの追及は鋭い。まるで、上質なサスペンスを読んでいるようだ。
 まだ、読まれていない方は、ぜひご一読をお薦めします。ただし、かなり重たい内容なので、そのあたりは覚悟して読んで下さいね。

 本書に中に人権派の弁護士が登場するのだが、この人は何をやっているのだろう。ウソをつくことによって刑を減らすことが、その後の少年の人生にどんな影響を及ぼすか考えたことがないのだろうか。自分の罪と真剣に向き合うことによってのみ、次の展開が見えてくるのに、この弁護士は、少年の将来を閉じてしまった。こんな弁護士や知識人が、まだ、のさばっているんだね。

 読書会の後は、いつものとおり刈谷駅周辺の居酒屋でオダを上げた。でも、昨夜はちょこっとお酒が苦かったなぁ。