間男が窓から逃げ出すようなマヌケな格好でワシャは検査台に横たわるのだった。
台に横になると検査技師がマヌケな下半身に毛布をかけてくれた。やれやれ、少しは患者らしくなってきましたぞ。
そうするとどこで待機していたのだろうか、中年の看護婦があらわれた。
「はーい、造影剤を打ちますから、左の腕を出してください」
極めて事務的に指示をくれる。
「はーい、シャツをもっと上までたくし上げてぇ」
「はーい、腕から力を抜いてぇ」
プツッ(針を腕に刺した音)。
フンギャー!
「はーい、大袈裟にのけぞらなーい」
「どこか痛いところがありますか?」
針を刺しているんだから痛いに決まってんだろ!
「針じゃなくてその周辺で痛いところはありますか?」
周辺は痛くない。針を刺したところも慣れてきた。
「それじゃぁ造影剤を入れますね。3分の2くらいが入ると身体が熱くなってきますが大丈夫ですよ」
「はーい、今、3分の1が入りました」
「はーい、今、半分です。気分はどうですか」
針が刺さっているので不快だが、とくにそれ以外に問題はない。
「はーい、今、3分の2が入りました」
およよ、口の周りから下顎にかけて熱くなってきましたぞ。それがだんだん上顎から額にかけて広がっていく。あらら、身体も熱を帯びてきた。これが造影剤を入れるということか。この火照り具合だといつもなら扇子をだしてパタパタと風を送るところだがそれもできない。不快というほどではないが、あんまり気持ちよくないな。
「イキヲスッテクダサイ」
突然、「東芝メディカルシステムズActivion16」がしゃべった。びっくりするじゃないか。
「イキヲトメテクダサイ」
機械に操られるのも癪にさわるが、ここは素直に従っておこう。都合、3回ほど息を吸ったり止めたりして検査は終わった。
再び看護婦が声をかけている。
「はーい、検査は終了ですよ。針をぬきますね」
「はーい、絆創膏を着けますね。止血帯をしておきますね」
左腕に圧迫を感じ置きあがって見ると、絆創膏のガーゼがずれてテープが直接針の跡にくっついている。これじゃぁはがすときに痛いじゃないか。もう少し丁寧に扱ってくれ。
それでもとにかく検査が終わってほっとしたのだった。