女体幻想

 中村真一郎という作家がいる。
 松岡正剛は『千夜千冊』(求龍堂)の中で、中村の小説よりも、晩年になって仕上げた3冊の評伝を絶賛している。『頼山陽とその時代』『蠣崎波響(かきざきはきょう)の生涯』『木村蒹葭堂(きむらけんかどう)のサロン』であり、3冊とも大著である。
 残念ながら浅学のワルシャワは3冊とも読んだことがない。悔しいので入手しようと思ったが、前の2冊は絶版で、『木村蒹葭堂』は5,880円だった。ううむ、興味本位だけで買えにゃい。
 でもやっぱり悔しいので「日本の古本屋」で検索をかけた。
 げげげ、『頼山陽』が単行本で5,000円から13,000円、文庫本(3冊)で5,000円から9,000円とかなりお高い。おっと『蠣崎波響』は1800円という安いのが出ている。これを注文して読んでみて、面白かったら他の2冊に手を出すことにしようっと。
 中村の大著はないけれど、選書、新書、小説などは何冊か持っている。
源氏物語の世界』(新潮選書)
『色好みの構造』(岩波新書
『夏』(新潮社)
『秋』(新潮社)
『女体幻想』(新潮社)
の5冊が書棚にあった。
 中村真一郎、一言でいえば女好きである。先の2冊は、エロ師の光源氏の諸相や理念を明らかにしようとした労作であり、後の『夏』『秋』『女体幻想』は女性遍歴小説と言っていい。
 ワシャは真面目で石部金吉と言われているくらいだから、「女好き」の中村さんとは対極にいる人なのだ。この間なんか、内容が恥ずかしかったので知人の女性に、松浦理恵子『親指Pの修行時代』(河出書房新社)が貸せなかったくらいなんですぞ。
 だから中村真一郎の作品はワシャの書庫には増殖していかなかった。でもね、『夏』『秋』『女体幻想』の3冊は書庫にあふれる数多の書籍の中でも大切な本に位置付けられている。
 なぜか?それは装丁がとてもいいからなんですね。『夏』『秋』については、こちらをご覧ください。
http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=427365&log=20081123
『女体幻想』の装丁については、現在、ダントツに気に入っている。ワシャの好きな画家、榎俊幸の「裸婦」が表と裏に描かれているからだ。表は華奢だが匂いたつような大人の女性の立ち姿で、裏はあどけなさの残る少女がうずくまるようにして眠る姿である。
 この装丁がどこかに載っていないかとネットのあちこち探したが見つからなかった。お見せできなくて残念だ。仕方がない、一人で楽しむことにするか、むふふふふ……。