人間ドック

 延び延びになっていた人間ドックに、昨日、ようやく行くことができた。当初は10月に日程を入れておいたのだが、イベントと重なってしまい11月に延期。そういしたら11月の検診日にも大きなフォーラムが入ってきて、また日程を変更する。それが12月24日だった。年末もここまで押し迫ればイレギュラーなスケジュールは入るまいと思っていたら甘かったわい。午前中に重要な会議が組まれ、再々変更を病院に連絡することになる。人間ドックは歳越しか、と思っていたら、その翌日(25日)が空いているということだったので、そこに入れてもらった。

 早朝から総合病院に出掛けましたぞ。受付時間の30分前に行ったのだが、予約番号札は11番だった。年末だというのに結構混んでいる。受付を済ませ、検診着に着替えると、クリス・アンダーソン『フリー』(NHK出版)を脇に抱えて検診ルームに向かった。
身長、変わりませんな。
体重、うむむむ、去年より少し増えた。こりゃいかん。
血圧、128−77正常だ。
採血、ううう、ワシャは伊良部一郎先生と違って注射をしているところを見ることができない。伊良部総合病院のマユミさんのような看護婦さんがワシャの二の腕にゴム管を巻きながら話し掛けてきた。
「今晩、お暇?」
 とは言わない。
「採血をして気分が悪くなったことはありますか?」
 と聞いてきた。ワシャは素直に、
「注射が嫌いなのでいつも気分が悪いです」
「それだけ?」
「それだけですぞ」
「では、針を刺しますのでチックっとしますよ」
「どんぞ」
「もう少し腕の力を抜いてください」
「恐いので力が抜けまへん」
「では、指を開いてください」
「恐いので指が開きません」
 そう答えると、マユミさんは突然大声をあげた。
「ええかげんにせんかい!」
 ワシャがびっくりしている間に、マユミさんはプツッと針をヒジの裏に刺した。あっという間に採血用容器にワシャの碧血が充満していく。あららら、貧血を起こしそうだわさ。
 ぐったりとしていると、マユミさんに尻を叩かれて、次の検査に向かうのだった。(つづく)

(注)文中に突然出てきた「伊良部一郎」と「マユミさん」については、奥田英朗『宮中ブランコ』(文芸春秋)をお読みくだされ。面白いですぞ。