土壇場の自民党 その1

 書庫から何冊か本を出してきて読んでいる。その中の一冊は「二十一世紀を担う子どもたちのために」という副題のついたハードカバー。タイトルは『文相初体験』で、出版社は日本教育新聞社である。そして著者は誰あろう、かの森喜朗元首相である。森さん、晴れの文部大臣になって、文部行政に寄生する新聞社から「本でも出しませんか?」とアプローチされ舞い上がってしまったんでしょうね。それでこんなへんてこりんな本を出版してしまった。
 でね、「日本の古本屋」で検索をかけてみたが、なんと1冊しかヒットしなかった。これは稀少ですぞ。売価も当時の定価より75円も高く1575円になっている。でも、読む価値はほとんどないと思う。森喜朗のバカさを検証するための資料としては役に立つかもしれないが、それ以外には見るべきところはない。
 冒頭、森元首相の「思いやりのある、風雪に耐える若者を」と題した4000字(原稿用紙10枚)の文章が載っている。察するところ370ページ中でこの「巻頭言」と「あとがき」だけは本人の文章で、あとは別のライターが書いている。間違いない。何故かって?だってこの部分だけが異様に下手な文章なんだもん。
 文章の中に「〜だ。」で終わる断定文が多用されると読みづらい文章になる。だから「〜だ。」は文章のポイントで、ここぞというところで効果的に使う。800字でも2〜3箇所で押さえこまなければいい文章とは言えない。
 ところが森さんは、4000字82文の内、25で「〜だ。」を使っている。「だ」率で3割である。これは酷い。これでよく文部大臣が務まったものだ。(この文章でもここまで660字20文ほど書いてきてようやく末尾に「だ」を使った。「だ」率5%である)
 他の文章はどうやら人の手が入っている。巻頭言と比べるとずいぶん上手い。そういったものを含めて論4本90ページと、残りは対談・鼎談と国会議事録からの抜粋で構成されている。
 森さん、正直なんでしょうね。この対談・鼎談中、随所に、勉強してこなかったことを自分から暴露している。
(下に続く)