落語会

 夕べ、近所のお寺で落語会が開催された。出演は瀧川鯉昇(りしょう)、春風亭正朝(しょうちょう)、春風亭正太郎、瀧川鯉毛(こいけ)、それに津軽三味線の澤田成珠(なるみ)。
 鯉昇は相変わらずフラフラしながら話をすすめる。落語会に詰めかけている400人くらいの人が、みんな鯉昇がお目当てだから、坐ってため息をつくだけで「ドッカーン!」と笑いが起きる。相変わらずの病気ネタ、同窓会の噺から、隧道に出る幽霊の噺まで引っ張っていって「質屋蔵」につなげる。40分喋ったのだが、会場は終始爆笑のうずにつつまれていた。
 
 正朝は、鯉昇と同年である。しかし頭皮が寂しい鯉昇に比べて、正朝はフサフサなので若く見える。入門は鯉昇より2年遅いが、真打昇進は5年早い。正朝、わりと端正な顔立ちなので、不気味な面構えの鯉昇を、その点で追い越したか(笑)。
 ワシャは何冊か、上手い落語家を解説した本を持っている。広瀬和生『この落語家を聴け!』(アスペクト)、『噺家のはなし』(小学館)、吉川潮『待ってました!花形落語家、たっぷり語る』(新潮社)などで、それこそ著者が上手いと思う落語家がたくさん出てくる。残念ながら正朝師匠、その中からは漏れていた。まだ62歳だから、今後、どう枯れていくのかを楽しみにしておこう。噺を聞く限り、現時点では、真打昇進で勝った鯉昇に大きく水をあけられている。
 その正朝、掛けた噺は「お花半七」またの名を「宮戸川」というが、ううむ、もうひとつお花が色っぽく可愛く演じきれていない。艶っぽい噺でもあるので、ここはしっかりと演らなきゃぁ。正朝の真面目な地金がそのまま半七に出てしまって、そこに正朝がいるのである。会場には受けていたようだが……。
 
 正太郎は正朝のたったひとりの弟子である。二つ目になって6年目、林屋たい平に似た風貌と、そのせいか落語自体もなんとなく似ているような……。これは今後の精進如何によってはおもしろい噺家になるだろう。「堪忍袋」をうまく掛けている。
 
 鯉毛は正太郎と同じ歳ながら、入門は6年遅い。もちろんその差は大きい。掛けた噺は前座噺の「やかん」。ところどころ噛むし、日常語が(わざとではなく)流れの中で出てしまって噺を壊している。がんばって修行してね。
 
 そして何よりよかったのが、お仲入り直後の色物の津軽三味線がよかった。澤田成珠師匠である。佐渡おけさ津軽あんや節、ソーラン節の三味線がいい。また師匠の声もいいねぇ。
http://narumisawada.web.fc2.com/img/ta-H23.2.26kouza.pdf
 この人です。そして締めは、津軽じょんがら節、これは大迫力でしたぞ。これだけ間近で、これだけの撥さばきをする名人を久々に見た。あ〜楽しかった。