賛否 その1

 昨日(8月31日)の朝日新聞の「耕論」が面白い。
 ご存知、養老孟司さんとコラムニストの中野翠さん、そして環境NPOの代表である加藤三郎さんのお三方がそれぞれの立場から、現在の「エコブーム」について書いておられる。
 養老さんはこう言う。
《エコがブームになっている最近の状況を見て、気になってしようがないことがある。それは、官僚や政治家が国民に対して「もっと省エネを」「環境のために我慢を」などと説教をしたり道徳を強調したりしている点だ。》
《精神運動によって支えられたエコブームは、問題の本質をゆがめてしまう。》
《世界のリーダーたちが本当に世界中の二酸化炭素を減らしたいなら、石油に対して、消費の抑制よりも生産調整に取り組むべきだ。消費の抑制は、自分が節約した分をだれかが「いいように」使ってしまえば、効果がないからだ。》
《国民が精神運動に突き進んで自己規制するような社会は、ストレスがかかって何とも息苦しい。》
 中野さんは、エコ自慢の芸能人や分化人がドッと出てきたことに違和感を訴えている。
《エコを絶対的な正義として信仰したいというのであれば、ある意味で気が楽だろうが、実効性についての議論や検証が深まらないままのブームは危険だ》
《「エコライフ」派の決まり文句になっている「小さなことの積み重ねが世界を変えてゆく」にも疑問がわく。「小さなこと」に自足して、「大きなこと」を見逃すということもあるのではないか?》
《「誰も反対できない正義」を手にした人間はおうおうにして狭量になるものだ。》
《戦時中、「ぜいたくは敵だ」とハサミを持って街頭に立ち、通りすがりの女の人の振り袖を切ったオバサンたちがいた。(中略)何しろ「同調圧力」の強い国だ。》
《エコは先進国のある種の贅沢思想だ》
(下に続きます)